アルベルト・ザッケローニ監督  撮影:大崎聡

日本代表の世界戦略が、ついに明らかとなった。ブラジルW杯開幕のちょうど1か月前にあたる5月12日、ザックことアルベルト・ザッケローニ監督が23人のメンバーを発表したのだ。

特徴的なのは大久保嘉人の選出

ザックのもとに集う選手をひと言で表せば、「日本らしいパスサッカーを、柔軟に実現できるグループ」になる。

特徴的なのは大久保嘉人の選出だ。2012年2月以来の代表復帰は、サプライズとして話題を集めている。横たわる空白期間を考えれば驚きをもたらすかもしれないが、イタリア人指揮官には確かな戦略がある。

日本代表が基本布陣とする4-2-3-1に、大久保を当てはめてみる。W杯開幕直前に32歳の誕生日を迎える彼は、2列目と呼ばれる「3」の両サイドと1トップでプレーできる。ひとりで3つのポジションをカバーする多様性は、チーム戦術のさらなるバリエーションアップを促すだろう。

対戦相手を想定したオプションにもなる。

日本が強みとする攻撃パターンは、コンビネーションによる崩しである。

2列目左サイドの香川真司とトップ下の本田圭佑を中心に、複数の選手がボールに絡んで局面を打開してきた。1トップの柿谷曜一朗や2列目右サイドの岡崎慎司の飛び出しも、彼らが相手の警戒を惹き付けることで引き出されている。長友佑都と内田篤人の両サイドバックの攻撃参加にしても、前線で攻撃の起点となる本田や香川がいるからだ。

しかしながら、日本の強みは対戦相手も熟知している。とりわけ第2戦で対戦するギリシャは、自陣に深く引いてくることが濃厚だ。柿谷や岡崎が飛び出すスペースを、本田や香川が連携を発揮する空間を、あらかじめ消されてしまうかもしれないのだ。