サッカーの移籍マーケットを語る上で、避けて通れない話題が“移籍金”の金額。なかでも、イングランドのプレミアリーグは不思議なほど潤沢な資金を誇るクラブが多い。その秘密とは一体、なんなのだろうか?
お金というのは、あるところにはあるものだ。リーマンショック以降、深刻な不況の波はサッカー界にも押し寄せた。しかし、プレミアリーグだけは妙に金回りがいい。
今夏の移籍市場を振り返ると、ギャレス・ベイル獲得に8500万ポンド(約140億円)を支払ったレアル・マドリー、エディンソン・カバーニとラダメル・ファルカオをそれぞれ競り落としたパリ・サンジェルマンとモナコ、ネイマールを獲得したバルセロナらが話題の主役だったことは否定しない。
だが、彼らは各リーグに君臨する〝例外〟でしかなく、2強18弱のスペインも、外資に買収された金満トップ2が突出するフランスも、〝その他大勢〟との間には大きすぎる格差がある。そんな中、リーグ単位の投資額で他の追随を許さないのがプレミアリーグだ。
この夏、プレミアリーグの全20クラブは、歴代最高額となる6億3000万ポンド(約1040億円)もの大金を選手獲得につぎこんだ。スペイン、イタリア、フランス、ドイツのリーグが使った補強費用は、それぞれプレミアの半分程度に過ぎない。特徴的なのは、マンチェスターの2強やチェルシー、アーセナルら上位クラブはもちろん、中小クラブでさえ1000万ポンド(約17億円)級の選手を複数引き抜ける資金力があることだ。
例えば、サウサンプトンはローマのFWダニエル・オズヴァルド、セルティックのMFヴィクター・ワニアマ、リヨンのDFデヤン・ロヴレンの3選手を獲得するために計3550万ポンド(約59億円)もの移籍金を支払った。また、フィテッセからFWウィルフリード・ボニーの獲得に1200万ポンド(約20億円)を投じたのはスウォンジー。昇格組のカーディフですら、夏の補強に3000万ポンド(約50億円)の予算があった。これらは他国ならトップクラブ級のバジェットだ。中位~下位のクラブがそれだけの額を出せるのはプレミアだけ。中小クラブを含めた移籍市場全体の主導権は、今もイングランドにある。