北澤豪 撮影:新関雅士
  

ブラジル・ワールドカップ杯開幕を直前に控えた、日本代表を最終チェック! 元日本代表でサッカー解説者の北澤豪さんが、5月27日に行なわれたキプロス戦を振り返りつつ、W杯グループステージの戦いぶりを展望する。

まずは初戦コートジボワール戦で勝ち点3を取りたい

──国内での壮行試合となった5月27日のキプロス戦は、1対0で勝利しました。

「内容的には物足りなさがあったかもしれない。ただ、僕自身はワールドカップへ向けて日本中が気持ちにスイッチを入れる一日であってほしい、と考えていた。内容はともかくとして、きっちり勝ったことは評価したいですね」

──日本代表は2日前まで合宿を行ない、かなり厳しいトレーニングを積んでいました。疲労感が残っており、コンディション的に難しかったと思います。

「サッカーに詳しい方ならそうした背景をご存じかもしれないけれど、何も知らない方は『えっ、キプロスに1対0?』と感じたかもしれない。日本代表への期待が高まるとともに、応援してくれる層が広がってくると、それぞれに違った反応が生まれますよね。そこは難しいなあ、と」

──なるほど。

「僕はスタジアムで解説をしたのですが、ユニホームを着ている方がすごく多かった。ほとんどの方は着ていたでしょう? ワールドカップの認知度が高まり、チームへの期待もまた高まってきている表われだな、と思いましたよ」

──試合については?

「中心選手の本田圭佑と香川真司が、所属クラブであまりいいシーズンを遅れなかった流れのなかで、まだちょっとフィットしきれていなかった。彼ら二人の影響力は大きいので、残された時間でいい準備をしてほしい。動きの良かった選手としては、長友佑都をあげたい。ちょっと頑張り過ぎじゃないなかな、と心配になるぐらいでした(笑)」

──サプライズ選出となった大久保嘉人も、後半途中から出場しました。

「彼のプレーは所属先の川崎フロンターレでも継続して観てきたので、好調さや日本代表のサッカーに合うのは理解できる。実際に、チーム内の連携は問題なかったと言えるでしょう」

──2年数か月ぶりの代表復帰でしたが、違和感がなかったですね。

「4-2-3-1のシステムで1トップを務める選手が、柿谷曜一朗と大迫勇也の二人だけでは、ちょっと心配でした。大久保が加わったことで、柿谷と大迫を含めて状態の良い選手を選べる。サプライズ選出ではなく、チーム戦略として必要だったのでしょう」

──それでは、グループステージを展望していきましょう。まずはコートジボワール戦との初戦です。ここで勝点3を取りたいですね。

「それはもう、間違いなく。初戦を落とすと難しいのは、過去のデータが裏づけています。日本のグループCは、どこが勝ち抜いても、どこが敗退してもおかしくない。そして、日本が標榜するサッカーは、攻撃的に主導権を握ろうとするもの。リスクは大きい。全勝する可能性も、全敗してしまう可能性もある」

撮影:大崎聡

 ──どちらの可能性もありますね。

「ザッケローニ監督にははっきりとした哲学があって、チームのスタイルは確立されている。こんなサッカーがしたい、というのは読み取れる。主導権を握るサッカーは世界のトップ5とかトップ10しか目ざさないもので、それはやっぱりリスクがあるから。けれど、2010年のような守備に軸足を置いたサッカーをしたら、この4年間の進歩がはかれない。全敗することがあったとしても、何らかのものは残ると思う」