─日本のスタイルを、対外的にも発信してほしいです。
「日本サッカーの長い歴史のなかで、そういうチャンレジをする時期が、ちょうど今回のブラジルW杯のタイミングでやってきたなあ、と。チャレンジできるだけの戦力も揃っていますし」
日本は短い距離のパスをつなぐのが特徴だが、長いパスもうまく織り交ぜていきたい
──コートジボワールで警戒すべき選手は?
「日本は短い距離のパスをつなぐのが特徴ですが、狭い局面の攻防はアフリカ勢が得意とするところ。人と人との距離が近くなるので、身体のぶつかり合いが増えるとさらに難しくなる。身体の強さでねじ伏せられてしまうので。コンタクトプレーを避けるためにも、距離の長いパスをうまく織りまぜていきたい」
──パスの長さを考えつつも、日本人の敏捷性フル稼働して。
「パスの受け手と出し手の関係だけでは、相手の守備を崩すのは難しい。3人、4人とボールに絡んでいくイメージ。その意味で、コンディションは重要になってきます。キプロス戦を振り返ると、全体的に動きの距離が3メートル足りなかった。一人ひとりの1試合の走行距離も10キロに満たない。W杯では12キロぐらい走らなければ。キプロス戦より3メートルから5メートルぐらい長くランニングできると、スペースも空いてきますから」
──ギリシャとの第2戦のポイントは?
「1試合目の結果次第でしょう。日本が初戦を落とし、ギリシャが勝点3をつかんでいたら、相手がストロングポイントを出しやすい展開になる」
──連敗できない日本は、攻撃に重心を置かなければいけない。そうすると、ギリシャ得意のカウンターが効きやすくなる。
「そういう戦いには、滅法強いですから。相手に主導権を握られるほど、ギリシャは自分たちの良さを出せる。粘り強さや精神力は日本人の特徴ですが、ギリシャ人も粘り強い。これといった特徴はないけれど、ホントに粘り強く戦ってくる」
──コロンビアとの第3戦も、前2試合の結果次第でゲームの方向性は変わってきますね。
「コロンビアが連勝で2位以内を決めていれば、勝点を取れる可能性が高まるのでは。ヨーロッパのどこのクラブでも欲しがるストライカーが揃っているチームですが、中盤からガチガチとボールを奪いにこない。日本の選手からするとやりやすい相手で、うまくハマるんじゃないかなと、個人的にはみています。楽観的だと言われそうですが(苦笑)」
──日本の健闘を祈るばかりですね。ところで、北澤さんも現地へ行かれるそうで。
「現地入りするのが決勝トーナメントからなので、何としても日本に勝ち上がってほしい! あとはやっぱり、ブラジルで行なわれる大会ですから。ワールドカップが似合うでしょう?」
──どこの国よりも、似合いますよねぇ。
「僕はね、1990年のワールドカップをブラジルで観ているんです。本田技研の選手として、現地へ留学をしていたので。ブラジルの試合が始まると、街から誰もいなくなりました。車も走らない。ブラジルが点を取ると、花火が上がったり。最高の雰囲気でした」
──90年大会で、ブラジルは宿敵アルゼンチンに負けました。国民の反応は?
「全員が泣いていました(苦笑)。留学先のクラブのチームメイトがあまりにも落ち込んでいるので、僕が励ましたぐらいですから。現在はワールドカップ開催に反対するデモも行なわれていますが、基本的にはサッカー最高、ワールドカップ最高! という国民性です。サッカー王国ブラジルで行なわれるワールドカップを、ひとりでも多くの人に体感してほしいですね」
実はワールドカップ開幕前にも、北澤さんは取材でブラジルを訪れている。サッカーを通じた国際的な社会貢献にも長く取り組んでおり、平均すると月に一度は海外を訪れるという。
渡航先では、到着直後から組まれていることも少なくない。手持ちの日本円などを現地通貨に換金する時間もなく、慌ただしくスケジュールをこなすこともあるそうだ。