要因はなにか。答えは高額な〝テレビ放映権料〟にある。80の放送局によって212の国と地域で放送され、世界に20億人いるとされるフットボールファンの70%、実に14億人が視聴するプレミアリーグは、放映権料がケタ違いに高い。今シーズンの契約更改により、国内で試合を放送する「スカイスポーツ」「BTスポーツ」の2局がリーグに支払う契約料は、今後3シーズンで30億ポンド(約4950億円)と過去最高を記録した。これは前回契約から70%増という驚異的な伸び率で、放映権料の高騰は留まることを知らない。

さらに日本を含む海外のテレビ局が支払う海外放映権料を加えた総額は50億ポンド(約7500億円)と言われ、年間で約17億ポンド(約2750億円)がリーグに入ることになる。ちなみに、セリエAは年間9億ユーロ(約1230億円)、ブンデスリーガは7億ユーロ(約960億円)。その差は歴然だ。

では、具体的に各クラブはどれくらい放映権料の恩恵を受けられるのだろうか。プレミアはまず、総額のうち「海外分の全額」と、「国内分の50%」を全20クラブ+過去4年間の降格クラブに均等分配する。降格クラブにも分配するのは「パラシュート・ペイメント」と言って、降格により経営状態の悪化から破産を防ぐための救済金だ。そして残り50%のうち、25%が最終順位に応じて分配される「賞金」となり、残り25%は、ライブ中継された試合数など「放送実績」により分配される。

放送試合数がクラブで異なるのは、英国ではリーグ戦が全試合中継されるわけではないためだ。基本的に土曜の15時~17時の試合は、ライブ中継が禁止されている。これはできるだけスタジアムに足を運んでもらうための配慮で、テレビ観戦ができるのは他の時間帯に設定される〝注目カード〟だけ。テレビ観戦に限れば英国より多い試合数を生で見られる国もある。
 

12-13シーズンのプレミアリーグにおけるクラブ別の放映権収入額の順位(出典=インデペンデント紙Webサイト)。

ルールを並べられても、ピンとこない。それなら、昨季にクラブが受け取った額を実際に見るのが手っ取り早い。

優勝したマンチェスター・ユナイテッドは放映権収入だけで6080万ポンド(約100億円)の大金を手にしている。4位のアーセナルは5711万ポンド(約94億円)で、今夏クラブ史上最高額で獲得したメスト・エジルの移籍金4250万ポンド(約70億円)を支払ってもお釣りがくる。昨季14位だったサウサンプトンは4380万ポンド(約72億円)。これも、前述した今夏の獲得選手3名の移籍金を上回る収入だ。

そして驚くべきは、最下位だったQPRですら、3975万ポンド(約66億円)も分配されている。66億円は昨季チャンピオンズリーグで準決勝に進出したR・マドリーが、同大会の放映権料分配金としてUEFAから受け取った額とほぼ同額。プレミアの放映権料には、欧州最高峰の舞台で勝ち進むのと同程度のうまみがあるということだ。

さらに国内放映権料が70%増になった今季の分配金は、推定で優勝チームが1億ポンド(約165億円)、最下位でも5000万ポンド(約83億円)に跳ね上がると見られている。CLやELに出場したクラブには、国内リーグ分とは別に欧州カップ戦の放映権料も入る。