浮気への一歩

その男性とは、趣味の映画の話で盛り上がったそうです。

「好きな俳優の名前を出したら、『これがいいよね』って返事に書いてきた作品が私も大好きなもので、好きなジャンルとか俳優さんとかが同じでうれしかったです」

洋画より邦画が好きな彼氏とはあまり話が合わなかったそうで、「この人も洋画好きで、マニア向けの映画とかもいろいろ知っているので、話していて飽きませんでした」と、慶子さんは強い関心を覚えます。

男性は5歳年上でバツイチ、個人事業主で自分の知らない世界の話をしてくれることも、新鮮だったといいます。

「最初は夜だけだったのですが、そのうち昼休みにもメッセージが来るようになって、食べたご飯の写真とか送っている自分がいました。

彼氏がいることは最初に伝えていたので、本当に友達とやり取りをしているって感じでしたね」

慶子さんに彼氏がいると知っているからか、会うことを強制してこないところも、信用していた部分です。

その「信用」を間違った方向に育てたのが、ふたりが好きな俳優が出演する最新作の映画を「観に行きませんか」と誘ったことでした。

「彼氏を誘ったら『面倒くさい』って返されて、腹が立って。

その勢いのまま、この人に『行きませんか』と送ったら『いいの?』と返事をくれて、トントン拍子に約束が決まりました」

マッチングアプリでやり取りをしている男性とその映画に行くことなど、当然彼氏には言えず、

「でも、罪悪感のようなものは、正直なかったですね。

むしろ、どこかで彼氏のせいだと思っていました」

と、小さな声で話す慶子さんは、これが浮気の一歩になることには自覚があったといいます。