深まる仲

「いざ会ってみたら、送ってくれた写真の通りに清潔感のある人で、私のことをすごく気遣ってくれました。

チケット代を出そうとするので慌ててお断りしたら、『あなたは話していたときのままの、感じのいい女性だ』と言ってくれて、うれしくて。

映画を観た後はそのショッピングセンターにあるお店で食事をして、感想を言い合うのも楽しかったですね」

会うのは初めてだったけれど別れづらかったというその男性とは、食事の後にお店を変えてまだ話していたそうで、帰宅後すぐに届いた「よかったら、また会いたい」と書かれたメッセージに、慶子さんは胸が踊ります。

「彼氏以外の男の人とこんな時間を過ごすのは、初めてでした。

すごく充実していたというか、帰りたくないと思うのが久しぶりで、これが普通なのかも、と思ってしまって」

彼氏に黙ったまま、男性とはLINEに移動して会話を続け、その2週間後に食事に行きます。

その頃、慶子さんは男性に彼氏への不満を「洗いざらい話してしまった」状態で、不仲を知ってからは男性からのメッセージも気安いものが増えたそうです。

「『こんないい彼女を大事にしないなんて、彼氏は駄目だね』とか言われたら、そうだよねってつい返してしまうんですよね……。

『いつでも愚痴ってね』って彼はいつも優しくて、どんどん甘えていきました」

彼氏への連絡はすっかり減っており、週末の約束もしないほど距離は開いていましたが、それよりもこの男性と過ごす時間のほうが、慶子さんには大切だったそうです。

これは「浮気」だ、と慶子さんがはっきりと自覚したのは、金曜日の夜に居酒屋を出てから駅まで歩いているとき、男性に手を握られたときです。

「そういう雰囲気だったというか、飲んでいるときも肩をぶつけて笑ったりしていて、彼との距離がだいぶ近いことはわかっていました」

手を握られても嫌な感情はまったくなく、むしろもっと一緒にいたいと思ってしまった慶子さん。

その夜はそのまま駅で別れたそうですが、「次に会ったら一線を超えるだろうなって、向こうも感じていたと思います」と、ため息をつきました。