横浜市の小児医療費助成の現状

左から加藤さんと丸山さん

では、東京都と横浜市では、なぜこんなに違いがあるのだろうか。取材に対応してくれたのは、横浜市健康福祉局生活福祉部医療援助課長・加藤隆生さんと福祉医療係長・丸山直樹さん。

先ほどの表でも記載したが、現在の横浜市の小児医療費助成内容は以下のようになっている。

・所得制限なしで無料(窓口負担なし)なのは0歳のみ。
・1歳から小学校1年生までは無料(窓口負担なし)、所得制限あり。
・小学校2年生から中学校卒業までは入院費のみ無料(窓口で支払った後、区役所で払い戻し)所得制限あり。入院時の食事代は助成なし。

 

横浜市の小児医療費助成の詳細
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調査対象とした東京都の都市は、町田市以外は所得制限もなく中学3年生まで医療費の負担はない。

もともと、この小児医療費制度とは「神奈川県費補助事業」として1995(平成7)年に始まった。この県補助事業とは、かかる費用の一部を県が負担するというもの。

この事業開始当初は、神奈川県が費用の2分の1を負担し、残りの2分の1を横浜市が負担するということになっていた。しかし、神奈川県の財政難により年々県が負担する金額は減っていき、現在ではかかる費用の4分の1のみを県が負担、となっていて、残りの4分の3は横浜市が負担しているのが現状だそう。

県の負担額は、政令指定都市と中核市、そのほかの市で異なる。今回比較した川崎市、相模原市も横浜市と同じ政令指定都市なので、負担率は同じとなっている。
 

所得制限の年収金額。扶養家族の人数により異なる
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対象となる所得金額は、共働きの家庭の場合、両親の収入の合算ではなく、どちらか一方の高い方が判断基準となる。

つまり、父母ともに500万円の所得額の場合、世帯収入は1000万円となるが、片方の所得のみを判断基準とするため、この家庭の場合は小児医療費助成の対象となり、医療費は無料ということになる。この点についても、市民から「なぜ?」という疑問の声が多いとのこと。しかし、横浜市の財政上、県が設定している所得制限をそのまま使わざるを得ないのが現状のようだ。

20代の親であれば、ほとんどの家庭が医療費無料となっているそうだが、最近は年収が上がってくる30代や40代で幼児を持つ親も増えてきて、所得制限にあてはまる家庭も増加傾向とのこと。年代別に統計は取っていないそうだが、30代40代の親であれば2割くらいの家庭が所得制限で小児医療費の助成が受けられていないそう。