現在、妊婦から20cc採血するだけの “新型出生前診断”が行われています。正式名は“母体血胎児染色体検査(NIPT)”と言います。(※NIPTは、無侵襲的出生前遺伝学的検査(Noninvasive prenatal genetic testing)の略です。)

妊婦の血液の中にある胎児由来遺伝子を調べることにより、13トリソミー、18トリソミー、21トリソミー(ダウン症)などの染色体異常を調べるものです。

母体の負担もなく簡単に出来る検査ですが、陽性の場合は、診断を確定するために流産のリスクを伴う羊水検査を受ける必要があります。

結果によっては、夫婦は「産む、産まない」の重い決断を迫られることになります。今回は、出生前診断を経験した『立石流 子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方』の著者の立石美津子が“障害児を育てて今思うこと”についてお話しします。

陽性だった妊婦の9割が中絶という報道

テレビで産婦人科医が「お腹の赤ちゃんに障害があると分かった場合は出産後の育て方について、妊娠中、十分考えることができるようになります」と言っていました。

けれども、報道によると、検査を受けて“お腹の子に障害がある”ことが分かり、確定検査を受けて陽性となった妊婦のうち90%以上が人工中絶をしているそうです。つまり、出産後の育て方について考えて妊娠を継続する人は一割にも満たない状況です。

出生前診断では分からない障害

そもそも染色体異常は胎児に見られる異常のうち1/4を占めるに過ぎません。つまり、出生前診断で陰性であっても、病気や障害がないとは言えないのです。

単一遺伝子疾患、多因子遺伝、環境・催奇形因子によるもの、視覚障害や聴覚障害、発達障害があるかどうか等この検査では分かりません。また、出産時のトラブルで脳に障害を負ったり、生まれた後、病気で脳症になったり、事故に遭い障害児になることもあるでしょう。

軽い気持ちで受けた検査…筆者の経験

誰も好んで「障害児を産みたい」とは思っていないです。筆者もその一人でした。そこで18年前に出生前診断を受けました。検査の結果、「染色体異常ではない」だったのですが…、生まれた子は障害児でした。

その経緯をお話ししますと…

筆者は不妊治療をして38歳で妊娠しました。そんなとき不妊治専門のクリニックの壁に貼ってあった「高齢出産の方 トリプルマーカーテストを受けませんか?」と書かれたポスターが目に留まりました。

これから続く長い10ヶ月の妊娠期間、悶々と「お腹の子どもが障害児だったらどうしよう…」と不安を抱えながら過ごしたくはありませんでした。そんな軽い気持ちで受けた検査でした。

採血の結果、渡された用紙には「21トリソミー(ダウン症候群)の可能性80%」と書かれていました。

当時の検査は妊婦の血液を採血して確率を出し、その後、精密検査である羊水検査に進むものでした。そのクリニックでは羊水検査の設備がなかったので、医師から大きな病院の紹介状を書いてもらいました。

クリニックの帰り道、妊娠が分かってからバラ色に見えていた街並みが、灰色に見えたことを覚えています。