こちらとしては丁重に「日本のアニメの世界にようこそ」とお迎えしたつもりです。
中島:こちらとしては丁重に「日本のアニメの世界にようこそ」とお迎えしたつもりです。
キャラクターの本質は変えずに、周りの状況があまりにおかしくなってるからこうなるよね、というのを提示しました。
キャラそのものを変えてしまうのは、僕らのエゴになってしまい、失礼ですから。あくまでこういう状況に放り込まれたら、バットマンもこうなるんじゃないの? というのを描いてます。
水﨑:僕の意見もだいたい、中島さんがおっしゃってくれた通りです。
ノーランのバットマンもカッコよくて好きだけど、あれはノーランの表現手法でこう捉えましたというもので、決してあれが元のバットマンではないというのはありました。
あとは、呼ばれた(スタッフの)顔ぶれを見て「なるほど」と察するところはありましたね(笑)。
――求められているのはこういうバットマンだろうと?
水﨑:自分の一番得意なところに持ち込めばいいのかなって。
中島:それは里見プロデューサーの意思ですよね(笑)? 過剰な監督と過剰な脚本家と、過剰なキャラクターデザイン(※「アフロサムライ」の岡崎能士)が…。
水﨑:日本人の感覚という点で言うと、英語圏の人って日本に来ても日本語に対応せずに英語でゴリ押しするイメージがあるじゃないですか?
バットマンも最初、バットモービルを持って、自分のガジェットで立ち向かっていく。そこは重なるところはありましたね。
――そこから日本の文化に順応していく姿まで描かれてますね。
水﨑:そこで一度、挫折するアメリカ人ですね(笑)。
日本が誤解されたら面白い(笑)
――浮世絵のような色合いであったり、外国人が好きそうなテイストがたくさん盛り込まれていますね。
水﨑:ほかの案件でアニメ作るときは、ああいう色合いにはしないです。
そういう意味で、過剰に日本を推した部分はありますね。
ハリウッド映画に出てくる、間違った日本の描写って面白いじゃないですか。あれを僕らが発信することで、日本が誤解されたら面白いなって(笑)。
中島:キミたちの誤解は間違ってる! 本当の日本人が日本人を誤解するってこういうことだ! というのを出せればいいなと(笑)。
――海外の観客は本当に日本を誤解したまま理解してしまうかもしれませんが…(笑)。
水﨑:あなたたちは日本をこう思ってるでしょ? というのをさらに拡大して、自虐的に(笑)。
ただ「誤解されたままでいいのか?」ということに関しては、時代が時代なので、映画を見ながらSNSでライブで意見を交換するようなスタイルが標準化している中で、「あれはわざとだよ」と解説してくれる英語圏の人も必ずいるだろうと。
それを見越して、情報が交換されるうちに、我々の真意も浮き彫りになるだろうからと、あえて劇中ではツッコミを入れてないんです。
他人の解説を聞いて、もう一度、見たくなるだろうと、繰り返し見てもらうのを想定して作った部分もあります。
アメコミなんだから、過剰にした方が…
中島:アメコミなんだから、過剰にした方が面白いよねという。
打ち合わせでも、僕が何か言うとそれに対して水﨑さんも岡崎さんもただ(アイディアを)足していく(笑)。その過剰さが我々の武器じゃないかと。
水﨑:こういう意見が出て、「いや、そうじゃない」じゃなくて、みんな、ただひたすら乗っかっていくんですよ(笑)。
中島:「だったら、こうしよう」って。
水﨑:それをワーナーやDCに説明し、説得する人たちが大変だったと思います(笑)。
中島:英語で「城が…」とか「猿がね…」とか(笑)。向こうにしたら、何言ってるかわかんないと思うけど、とにかくそういうことだからと。
頭おかしいですよ(笑)、水﨑さん
――今回、初めて一緒に仕事をされてみて、互いの印象やすごさを感じた部分は?
中島:頭おかしいですよ(笑)、水﨑さん。名言があって「90秒も90分も一緒」と。
神風動画のいつもの90秒の密度を崩さずに作り上げた85分。
「妥協は死」(※神風動画の社訓)を体現する人なんだなって思いました。
水﨑:(「頭おかしい」に対し)あなたに言われたくないという返しが必要ですかね(笑)?
初めての打ち合わせのとき、アシスタントの方が、中島さんの言うことをホワイトボードに羅列していくんですけど、どんどん置いてかれていく感じで…。
次々と物事が決まっていくのに、自分は何も足跡を残せてないという焦りがありました。
トイレに行くと、戻ったら既に進んでるんですもん(笑)。
引き出しの多さと理由付けのスピード感がすごいですね。僕も早い方だと思ってましたが、その5倍くらいのスピードの人がいました…。
あと、中島さんは否定しないひとですね。「違う」とか「そうじゃない」と言わず「それはそうかも」と受け入れる。
ご多忙なので、直接会える機会は多くなかったんですが、その中で「ここはカットしないと」という部分もあって、現場はどんどん進んでいくので、相談なしでいじる部分もあったんですけど、見せに行くと許容してくださるんです。
「これは正直、僕なら怒るな」という場面でも怒んないし、いろんなところに同行させていただいているんですが、まず「ありがとうございます」という言葉が先に出てくるんですよ。
中島:苦労してきたからね(笑)
水﨑:劇中のキャットウーマンのセリフで「女の気の迷いを許せる男は素敵」というのがあるんですけど、僕にはそのスケールはないなと。やはり、いろんな経験が…。
中島:脚本家と脚本の中身は同一じゃないから(笑)!
水﨑:中島さんの価値観が反映されているのかと(笑)。僕じゃあんなセリフ思いつかないですから。
中島:でも否定したくないというのはありますね。どんどんONしていく。
打ち合わせで一番大事にしてるのは、楽しいこと、ドライブ感があることですね。
みんなが(意見を)投げてくれるのが楽しいし、「ダメ」じゃなく「こうしたらどう?」というのが好きです。