ひとりでも育てられる。ただし、頼れる心と頼る人たちが必要

すべての大臣に対し、お金のやりとりは発生していません。それぞれが都合の良いときに、櫨畑さんやひかりさんと会いたくてやってきたり、ちょっと話を聞いてほしいというときに来たり、誰もが無理をせず、個々のペースでゆるやかにつながっている仕組みがあります。

「人付き合いはしんどいと思うタイプですが、知人・友人は多いほうだと思います。人的資源や社会的資源があるならフル活用したほうがいい。自分のファンを増やすというか、自分を応援してくれる人を増やして、信頼し支え合う仕組みは自分でつくれるものだと思います」

昔は人に頼るのが苦手だった櫨畑さんですが、今では各大臣に頼ったり、大臣とは関係のない相手にも、「ちょっと(ひかりさんを)抱いといて」と頼んだり、ライトなお願いができるようになりました。

ひとり親に限らず、子どもを育てる過程で大切なのは、ひとりで抱え込まず誰かに頼る力。櫨畑さん自身もそのことを強く実感しているといいます。

「友達が前に『極論、もし櫨畑さんが死んだとしても、日本はこんなに豊かな国なんだから子どもは育つし、僕が育てますよ』みたいな話をしてくれたんです。世間で言うところの“責任”を自分がすべて負えるわけじゃない。フジノの言葉から、なんとかなるもんだし、あまり先のことを考えすぎるのも良くないし、人を頼ってもいいんだと思わされました」

産みたいときに産める社会であれ

櫨畑さんは自身の生き様を通して、非婚出産や共同養育というスタイルを勧めようとしているわけではありません。非婚出産は、すべての女性に適した方法であるとは限らず、人によって合う・合わないがあります。

それに、結婚する・しない、子どもを持つ・持たないといった「自分がどう在りたいか」は、女性一人ひとりが考え、自分の意思で決めるべきものだから。

ただ、「わたしはこうやっているよ」と示しているだけ。その様子をSNSやイベント、書籍などで伝えています。あくまでひとつのサンプルとして捉えてほしいと考えているのです。

「女性が産みたいときに産める世の中であったらいいなと思っています。昔は社会的構造として、女性は子どもを産んで、子孫を残すのが当たり前だと考えられてきて、産みたい・産みたくないという女性個々の意思は尊重されずにいました。

でも、女性が産みたいときに、どうすれば産めるのか、育てていけるのか、みんなで力を合わせていけるのが理想です。そんな社会へ向かって、自分ができることを進めていけたらと思っています」

櫨畑敦子さん
大阪在住のシングルマザー。2017年に結婚をしないで出産した。現在、大阪市内の路地にある古い長屋で、友人たちと第一子を養育中。初の著書『ふつうの非婚出産 シングルマザー、新しい「かぞく」を生きる』を刊行。

フリー編集者・ライター。岡山県出身。中央大学法学部卒業後、楽天、リアルワールドを経てフリー編集者/ライターに。関心のあるテーマは女性の生き方や働き方、性、日本の家族制度など。結婚・離婚を一度経験。11月14日に『はたらく人の結婚しない生き方』を発売。