「ペダステ」の世界観を成立させている、さまざまな工夫

拡大画像表示 このハンドルをロードバイクに見立てて演技する。実際に車体はないのに、あるように見えてくるから不思議。

“舞台『弱虫ペダル』”を観劇するにあたって、まず疑問だったのがロードバイクの表現方法なのだが、ペダステでは「ハンドルのみでロードバイクを表現する」という独自の演出法を取り入れている。

ドロップハンドルと呼ばれる、特徴的な形のハンドルのみを持って、役者たちがモモ上げダッシュの状態で舞台上を駆け回る。ギアチェンジやブレーキなどの細かい仕草も、ハンドルを振ったりSEを入れたりすることで表現している。これは実際に観てみないとわからないと思うが、観ているうちに本当にロードバイクがそこにあるように見えてくるからすごい。ぜひ劇場で体感してみて欲しいことのひとつである。

 

拡大画像表示 レース中の自転車上での会話は、このようにしてスポット照明などでも表現される。演出方法がいちいち的確でとても見やすい。

また、原作中でも走行中の会話や、ロードレースでの駆け引きなどがメインになることが多いが、そういった道の上の表現もきちんと考えられている。大きな可動式のスロープのようなものを舞台上に数台設置し、それを“パズルライダー”と呼ばれる役者が押して動かし、坂道や走行中の道の上を表現する。

ちなみに、ロードバイクの選手はレース中にボトルを何本も飲まなければならないほど汗をかくが、舞台上で選手を演じている役者たちもスロープを何度も駆け上がり全力ダッシュし、常に汗だくなのが“ペダステ”がロードバイクのリアルさを表現できている理由のひとつかと思う。

 

拡大画像表示 全員で隊列を組んで走るようなシーンもあり。ちなみにけいこ場でも本番でも、出番が終わると倒れこんでゼーハーするくらい体力を使うのだとか。

“パズルライダー”は、自転車のホイールを持ったり、ガードレールを演じたりと、舞台上の小道具を表現する役割も負っている。彼らは役者と一緒に全力で演技しているので、実はペダステファンの中にはパズルライダーのファンも多いと聞く。

 

拡大画像表示 黒田雪成役の秋元龍太朗さん。脇でハンドルを支えているのが“パズルライダー”の方。こうして細かい表現をサポートしているのだ。

会場全体を使った演出があったりするので、パズルライダーたちも自然と観客の目に入りやすい。演出補助をあえて隠さず、芝居の一環として取り入れてしまうのがまたすごい。