個性的なキャラクターを俳優陣が熱演!
そして、何よりも全力でキャラクターを演じているキャスト陣。みんなイケメンなのは言わずもがな、全力でロードレース青春ストーリーを演じる彼らの額に光る汗を間近で見て、筆者は年甲斐もなく胸キュンしてしまった……。こりゃあペダステがここまで人気の理由がわかるわ……。何しろ席によっては、物理的に青春の汗を感じることができるわけである。これはマズイ。
特に今回主演を務めた鈴木拡樹さんが演じる荒北靖友は、本当に荒北だった(形容詞として使いたくなるほど“荒北”そのままだったのだ)。なにせ素顔は温厚なイケメンなのである。それが、ひとたび舞台上に上がると口は悪いわ、顔をひん曲げるわ、大声でがなり立てるわ、ものすごい変貌ぶりである。鈴木さんがどれだけ、原作の“荒北靖友”を理解して演じているかがビシビシ伝わってくる。その気迫にすっかりやられてしまう。
今回上演された「箱根学園篇~野獣覚醒~」は、主人公の小野田坂道が所属する総北高校が主役ではなく、ライバル校の箱根学園がメインとなっているストーリーだ。原作のスピンオフとして書かれた『スペアバイク』というシリーズから、荒北靖友の過去を描くストーリーを舞台化している。
荒北はもともと世を拗ねたヤンキーだったが、エースの福富と出会い自転車によって己の新たな可能性を見出し、名門箱根学園の自転車合競技部へ入部する。舞台では、荒北が入部してからエースアシストとしてレギュラーを獲得するまでの道のりを濃やかに描いている。ときにはハコガクの2年である黒田雪成や、ライバル校の京都伏見高校の御堂筋翔のオリジナルストーリーなどを挟み、約2時間の舞台中は原作ファンも大満足の盛りだくさん加減だ。
荒北靖友役で主演の鈴木拡樹さんのほかに、ハコガクレギュラー陣が出演した今作は、とにかくハコガクの選手を演じるキャストさんの魅力をたくさん知れたように思う。
泉田塔一郎役の河原田巧也さんは「アブ―――!!!!」という独自の口ぐせを実に違和感なく挟み込んでくる。新開隼人役の宮﨑秋人さんも、“箱根の直線鬼”に変貌する新開を実に鬼気迫る勢いで演じていた。原作ファンである筆者も、「あれは直線鬼だ」と納得してしまうくらい新開そのままであった……。