撮影:稲澤朝博

「今は…、子育てを社会的な仕事だと思いたい部分と、思いたくない部分と、矛盾するようですが、両方あります」

どういうことなのか、詳しくお聞きすると、

「やっぱり子どもはいつか社会にお返しするというか、社会を担っていく人として家を出ていく存在ですよね。

社会を構成する一員として立派に育ってほしいとは思うので、そういう意味では子育ては社会的な仕事だと思うんですが、一方で、別にそういう評価とか、あなたは社会的にいい仕事をしていますよって言われるのと無関係に、子どものことを大事にしたいっていう気持ちもあります。

たとえばこの子が立派に社会で活躍しないとしても、私はこの子を愛するし、責任を持って育てていくつもりです。

ふたつの気持ちがケンカしているわけではなくて、どっちも大事にしていいのかなという風に思っています」

と、母であり働く女性であることが、矛盾しないで両立できている明日香さんだからこそ口にできる、正直な気持ちを聞かせていただくことができました。

こんな時代だからこそ、子育てで大事にしたいこと

子育ての現場は、生産性があるからやる、やらないということは重要ではなく、重要なのは、おなかが減ったら食べさせることだったり、汚れたらお風呂に入れたり、眠くなったらお布団に寝かせたり、ことごとく生理に基づいた原始的なことばかりで、その繰り返しが子どもを育てるということなのですよね。

明日香さんは次のように続けます。

「そういう、何のためになっているかわからない時間を地道に積み上げていかないと、社会に出られるような人間は育たないと思うし、社会に出ることだけを念頭に置いて育てたら、大事なもの、なにか柔らかい中身の部分が抜け落ちた人間になってしまう気がするんですね。

いくらでも外から詰め込むことはできると思うですけど、なにか詰め込む前に強い生き物にしておかないと、結局中身は空っぽになってしまうんじゃないか、という気がするんです」

早期教育がもてはやされる今、明日香さんが言ってくれた言葉は深い意味を持つものだと感じました。

まとめ

いつか子どもは育って、親の元を離れ、社会に出ていきます。
その日を具体的に描いて子育てをすることは、宇宙のことを考えながら夕飯の献立を考えるくらい、現実的ではありません。

子育てにまつわるひとつひとつのことが、何のためになるのだかわからないけれど、とりあえず子どもは笑っていて、自分も心穏やかでいられる、そんな毎日が送れたら、それだけでじゅうぶんお釣りが来るのではないでしょうか。

もちろん、子どもがかんしゃくを起こすことも、ママの方がイライラしてしまうことあるでしょう。そういったことも含めて、一日の終わりにゼロに戻すことができたら、バンバンザイですよ。

『子どもは相棒 悩まない子育て』
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著者:和田明日香
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