独創的な“パズルライダー”が生まれたきっかけとは?
―― 斬新な演出が話題ですが、中でも特徴的な出演者である“パズルライダー”をあえてキャストとして登場させ、舞台表現をされている演出意図をお聞かせいただけますか?
西田 私は“ごっこ遊び”のような原始的な演劇が好きですし、そこに無限の可能性を感じています。ですから、舞台装置を機械仕掛けで動かさずに、俳優に動かしてほしいと考えました。その発想が“パズルライダー”の元となっています。提案を受け入れてくれたプロデューサーに感謝していますよ。
“パズルライダー”とは、前回の記事(【弱虫ペダル】イケメンに胸キュンだけじゃない! 初体験してわかった舞台「ペダステ」にハマる理由)でも説明したとおり、舞台装置を動かしたり、演出のサポートをする役者のこと。確かに、大きな舞台作品となればなるほど、機械仕掛けの舞台装置をもちいたりすることが多い中で、西田氏はこの演出方法にこだわっているように見える。
西田氏の構想どおり、この原始的でありかつダイナミックな演出方法は自転車ロードレースという題材を表現するのにピッタリだった。その演出方法は口コミで話題になり、瞬く間に舞台『弱虫ペダル』の人気につながった。
―― 現在上演中の舞台がインターハイ篇の最終日、作品がひとつの集大成を迎えますね。劇中の熱量は、今回がマックスでしょうか?
西田 僕もキャストたちもともに、常に自分たちの持ちうる100%の熱量を込めて毎日稽古をしてきました。舞台の熱量は、常に100%しかありません! ……ときどき500%とかになれたらいいんですけれどね。
劇中は、本当に“熱い”。最後列の席にさえも、キャストたちの全力の熱量が伝わってくるその熱さは、カンパニーの全員が常にそういう心構えで舞台作りに臨んでいるからなのだろう。演出家である西田氏はもちろん、おそらく関わっている全員がそうなのだろうと、上記の答えから実感する。
―― 今回の舞台では、どのシーンが見所でしょうか? また、今作で一番演出に力を入れた(悩んだ)シーンはどこでしょうか?
西田 全部見どころになって欲しいです、本当に。今作は、今までの公演の中でも一番走っている時間が長いので、そういう所にも注目してもらえたら嬉しいですね。やはり3日目はエピソードが多いので、それを2時間の芝居にすることには苦労しました。どのエピソードも大切ですもんね。作っているときによく思うのが、「すべてのシーンが、他のシーンの10倍難しい」です。
現在上演中の舞台『弱虫ペダル』インターハイ篇 The WINNERは、ロードレース・インターハイ3日目の、ゴールまでの決着を描いた作品だ。今から観劇される方のために詳細は置いておくが、本当にさまざまなエピソードが今作中には散りばめられている。脚本家の苦労が忍ばれるというものである。西田氏の言うように、全編通して見所くらいの心づもりで、濃いエピソード群を鑑賞するのをお勧めする。