いじめをなくすには教員へのケアも必要!
担任が一人しかいない日本の学校では、教室がご機嫌になるか不機嫌になるかは、かなりのウェイトが担任の教員にかかってきます。実際に、抑圧的な態度を取る教員のいる教室ではいじめが多いというデータもあるのだとか。
教員の存在自体がストレッサ―(ストレスの原因)になり、そのはけ口を求めていじめが発生するのですね。
とはいえ、今の時代、教員の背負うストレスや仕事量は相当なものです。それに苦にして精神を病む教員も多くいます。教員の精神疾患による病気休職者数は、平成20年に5000人を超えてから微減の傾向はあるものの、依然として深刻な問題です。
教員が抑圧的な態度を取ってしまう裏側には、教員もまた学校の内外からの圧力を感じてストレスフルになっているからかもしれません。
だとしたら、なおのこと、子どものストレスを減らすには、まず教員のストレスを減らすことが必要だと言えそうです。
荻上さんが提案するのは、副担任制やサバティカル制度(研究休暇制度)など、具体的なものです。抜本的にいじめの問題に取り組む人が増えてくれば、実現可能なことだと思います。
一方で、親にはなにができるのでしょうか。2013年に施行されたいじめ防止対策推進法の第十六条では、「いじめの早期発見のための措置」として、学校側に、児童や保護者、教職員が「いじめに係る相談を行うことができる体制」を整備するよう、学校側に求めています。
これは、学校のことはすべて学校に任せるのではなく、いじめの早期発見のためには必要があれば、親も積極的に相談し、学校側や他の保護者と協力していじめの芽を摘んでいこうということなのだと思います。
また、それ以前に、自分の子どもの担任と接触がある場合はその機会を逃さず、労いの言葉をかけたり、世間話を振ってみたりすることも、一助となることもあるのではないでしょうか。先生といっても、一人の人間ですからね。
それでも我が子がいじめにあってしまったら
小中学生を対象にした調査で、いじめにあった時、親や学校の先生に相談する子どもが半数以上いる反面、3割弱の子どもは誰にも相談しないことを選んでいます。
その理由としてトップに来ているのが、「誰にも心配や迷惑をかけたくないから」というのですから、切ないですよね。
年齢が上がるにつれて、親には相談しにくくなるということもあると思いますが、親が、「自分に言ってほしいけど、それが難しい場合は、こんな窓口があるよ」と伝えることは、無意味ではないと思います。
荻上さんが代表を務めるNPO法人 ストップいじめ!ナビは、実際にいじめにあった時に役立つ情報を伝える活動をしています。
相談窓口も、子どもが電話で相談できるもの、LINEやチャットで相談できるもの、メールで相談できるものなどの他に、保護者向けのものなど、複数紹介されています。
他にも、いじめにあった時にメモを取ることが自分を守ることになるなど、知っておいて損はないことなども、ストップいじめ!ナビのホームページには載っています。
また、あってほしくないことですが、子どもがいじめっ子になってしまう可能性もゼロとは言えません。
いじめは決して許されることではありませんが、いじめる子はストレスを抱えているという目でみれば、まず、子どもの抱えるストレスの原因を探ることが、めぐりめぐっていじめをしなくなることにつながるのではないでしょうか。
なにより家庭が、子どもが外で受けるストレスを解消できる場所であれば、弱い者いじめをすることで快感を覚える子どもは少なくなっていくのではないかと思います。
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いじめの問題はひとすじなわではいかないもの。まわりがいじめと思っていても、本人たちにとっては遊びの場合もありますし、その反対もしかり。
だからこそ、多角的なアプローチ、より多くの人をいっそ巻き込んでの対処が有効になるのではないでしょうか。
本書を読んで、いじめはダメ、と短絡的に考える前に、いじめの裏にはストレスがある、ととらえられるようになったことは、筆者にとって有益でした。子どもを持つすべての親御さんにオススメできます。