避けられない「孤食」と向き合う

「孤食」は、現代社会の側面を象徴するひとつの現象です。
しかし、その問題点を指摘するだけでは解決にはつながらないといいます。

群馬大学教育学部 食物研究室教授の高橋久仁子氏によれば、かつて家族そろって食事をしていたのは「家に帰らないと食べるものがなかったから」。

そのため家族の中心は「食べること」にあったが、今は外食やコンビニなど、お金さえあればいつでも簡単に食べ物が手に入るため、「食」が家族の求心力になりにくい状況にあるといいます。

仕事の関係や子どもの塾通いなど、さまざまな事情による「孤食」。
いろいろな事情を抱えた家庭もあるでしょう。けれども望んでそうしている方は少ないと思います。

「共食」の良さを知ったうえで、「孤食」させざるを得ない状況を仕方がないことと割り切り、どう向き合っていくか? その知恵が問われているのかもしれません。

忙しい親が、限られた時間でも出来ること

幼児教育専門家の熊丸みつ子さんは、大人一人ひとりが、子どもの幸せのためにできることを、できるところからかかわり、“伝えていく”、今はその正念場なのだといっています。

「私たちは、聞こうが聞くまいが、子どもたちに言い続けるしかありません。
伝え続けるのですよ。教えるのではなくて、伝えるのです。命を伝え、笑顔を伝え、優しさを伝え、食べることの大切さを伝え、そしていたわりを伝え、文化を伝え、生まれてきたことの素晴らしさを伝える。
伝えてもらった子どもたちは、必ず次に伝えていくと私は思っています。」

完璧な親はいない。子どもたちも完璧で立派な親を求めているわけではない。
子どもたちは昔も今も本質的には変わらない。

ただ、現代では子どもとかかわる量や、“大切なこと”を伝える場が少なくなっている。だから、大人は自分の持っているものをすべて出し、いろいろな人の力を借りながら子どもたちとかかわり、いろいろなことを“伝えていく”ことが大事だといいます。

「子どもたちは、いくつになっても『見てほしい』「わかってほしい」『かかわってほしい』『叱ってほしい』『愛してほしい』と言っています。これが子どもたちです。
どうぞみなさん、ご自分ができることを、できるところから、精一杯やっていきましょう。そして足りないところは、もらいましょうよ。そして、余っているものは、あげましょう。ひとりで頑張ろうなんて思わないでください。」