良い面を育てるのではなく、あれはダメ・これはダメと指導。ドリブルで2人抜いたのにシュートを外したから交代と、罰を与えるような指導は実際にありますし、「何度言ったらわかるんだ」と怒鳴ることもしばしば。

同書では、「国技」という視点で怒鳴りの背景に迫っています。
サッカー以前の日本のメジャースポーツといえば相撲や野球。どちらも厳しい上下関係が当然のように成り立ってきました。

今では減っているのかもしれませんが、かつては千本ノックやケツバットといった言葉もあり、それが躾ということで正当化されるといった傾向がありました。

両競技に共通することは「忍耐」こそ良しとする姿勢。
先輩や監督の指示は絶対。
それに反することはあり得ないという文化がありました。

そういった指導を見てきた大人が指導者となった場合、自然と人間教育に走ってしまうケースがあるのです。

それが子どもたちに与える影響は、怒鳴られることを嫌がり、自発的に動かなくなること。

その結果、ピッチ上で迷うシーンが増え、「指示待ち」が当たり前となってしまうのです。
もし、ピッチ上で自由に自分を表現できていなければ、何かしら原因があるのかもしれません。

 少年サッカーに“日本代表”の練習メニュー

また、インターネット環境が整うにつれて、練習方法がネット上にあふれるようになりました。すると、それを片っ端から教えようとする指導者が現れたのです。

サッカーの楽しさを学ぶべき少年サッカーのカテゴリに関わらず、結果を求める日本代表と同じメニューに取り組むことも。

ネット上で見つけた練習をするわけですから、指導者自身がその練習の目的や効果を熟知しているわけではありません。
自分のチームに適切だからというよりも、強いチームがやっているからで参考にした練習は、決して効果的だとは言えませんよね。

本来ならば、良い選手を育成するためには、自分で考えて判断し、行動できるようにする必要があるのですが、表面的なことばかりやっていると、練習の種類は豊富ですが、身についていないことも。

また、教えすぎに近いところで、結果を求めすぎるというものがあります。

育成の年代ではまだこのスポーツの楽しさを教える時期。大人さながらの時間稼ぎのプレーや、反則をもらうプレーを教わる時期ではありません。

「教えすぎる」ことが良いかと言えば、決してそうではないのです。