産後女性は大変だ!目指すはイチロー?
樋口:まず僕はですね、口答えはしない。
――え、反論しないんですか。ストレスたまりませんか。
樋口:初期の反省点を踏まえて、徐々に習得していった技術として。
あっちが何か言ったとしても、即座に返してはいけない。
自分に対して「ハイ、言いたいだろ?言い返したいだろ?いまボールを頭にぶつけられたんだから、すぐに投げ返したいだろ?」と思っても、頃合いを見てボールを返す。
タイミングを計るんですよ、時が流れてから、あちらが平穏な時に言えばいいんです。
そんな術(すべ)を、調教のおかげで身に着けることができました。
――それって、タイミングを見ても十分に返せていますか。10個ボールが来たら10個返せてます?
樋口:いいですか?ボールが10個来たら、2個打ち返せたらいいじゃないですか。10球の内、3球打てたら3割!イチローと同じレベルですよ!
三振だって凡打だって、あっていいんです。3割行けたら、それでいいじゃないですか。
――では、対する三輪さんは?10割バッターなのではありませんか。
樋口:ところが妻もですね、妻の立場で考えてみたら、やっぱり耐えていると思うので。
僕は僕でこういうメンタリティーというか、小説を書いている時は張りつめてピリピリしていますし、新刊が出たとなったら書店周りをして「どこにも置いてなかった、アァ!」という日もあるんですね。
妻も弁護士という仕事柄、いろんな人を見ていますから、プロファイリングが彼女の中でできているんです。
だから妻が帰宅した時に、僕が息子をあやしながら「おかえりー」って言っても、すぐに玄関に行かないと「コイツは今日なんかあったな」とか、感じ取っている。
息子を風呂に入れているワケでもないのに、笑顔で三つ指ついて迎えないと「今日のタケちゃんは腹に一物抱えていやがるな」っていうのを、敏感に察知することができていると思います。
子どもももう、3歳になりますしね。
――お互いに察し合えるようになってきたのも、夫婦や家族として時を重ねたから、ということでしょうか。
樋口:それもありますけど、一方で、もっとフィジカルな面もあって。
高齢出産のダメージを、やっと3年経って、脱することができたみたいなんですね。
本人曰く、産後3年は頭も身体も回らなくて、テレビに出ていても、今までだったらパッとすぐ出る一言が出ない。固有名詞だろうと言い回しだろうと出てこない。
番組で「三輪さーん?」って振られて、気の利いたコメントができないのが辛くて辛くて。
家でも同じような感じで、頭が働かない身体が動かない、とにかくしんどい。
穏やかな時に話してくれたんですけど、こんなんじゃなかったっていう苛立ちが、ずっとあったそうです。
僕は背中をさすって同情してね。「すまないなぁ、俺が代わりに子ども産んであげられなくて」って言ったら「ホントだよーッ」って、またキレられたんですけどね。
「それ、やめようよ、男に産めっていうのは、それもハラスメントじゃない?」って僕、言うんですけど。
この3年余り、耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍び、でも終戦はまだ、ほど遠い・・・
いまのところ、38度線で休戦協定が一応、かろうじて結ばれているくらいの。でも息子という人質がいますから、板門店を家庭内で行き来しているような状況です。
――といっても息子さんは、どちらにとっても人質になり得ませんか?
樋口:そうなんですよねぇ、ハハハ!
でもその人質を預かっている時間は、僕の方が圧倒的に長い。オムツ替えてる回数も、2桁は僕の方が多いですけどね。
どこのご家庭もそうかもしれないんですが、子どもの誕生から3年もすれば、夫婦の関係性に変化も出てくるでしょう?
例えば、我が家でもですね、妻が東京で事務所を開くことになって、京都からあらためて東京に戻ったり。ありがたいことに、保育園にも入れたんですが。