人間と他の生き物の見えざる壁を表現
6つ目の展示は、「誘蛾灯」。たかはしゆかさんの作品です。
作品名の「誘蛾灯」とは、青い光で害虫をおびき寄せて熱で殺す装置のこと。この作品では、人間の形は人間の平和、そして「青」は青信号の進めや安心・安全のイメージなどといった人間の作ったルールを象徴しています。
銀色のフェンスで作られた人間の形に、布で作られた蛾がおびき寄せられ、「青」という人間のルールによって殺される。犠牲の元で、人間の平和を維持していることを表しています。
「人間と蛾。両者は同じ動物でありながら、人間と他の生き物の境界線を私は感じます。そのため、境界線が作られていることをフェンスという素材を使うことで表現しています。」と、たかはしゆかさん。
元々動物が好きな彼女は、人間と他の生き物の間の見えざる壁についてこれまで表現してきたそうです。その気持ちが、今回の作品からも強く滲み出ていました。
糸で絵が描けることにびっくり、繊細に作られた「糸絵」
次からの3作品は、糸で絵が描かれている「糸絵」。水尻千裕さんの作品です。
最初に、「水と油」です。うずくまる人、これは水尻さん自身のこのグループ展に馴染めるか不安だった内心を表現しています。
先に虫ピンを沢山打ち付けて、その後黒・白・ベージュの3色の糸を引っ掛けて作られています。
また、青い照明の下では、浮き出ます。
次に、「生きてる」です。
この作品は、展覧会に来たお客さんに、「生きるとは何か」を書いて貰った紙を集めて人型を作っています。
自分の言葉が作品の一部になることがとても面白く感じました。
最後は「盲目」。当初は目が描かれていたものだったそうですが、「それでは盲目ではないのではないか」と考えた後、絵の具を塗りつけてその上からカッターで壊した作品です。
次の展示は、百(もも)さんの作品「Ich muss du finden」。ドイツ語で「君を見つけなくちゃ」という意味です。
「たくさんの赤い糸が複雑に絡み合うこの絵は、外の光や普通のライトでは何も変わりませんが、青いライトでは色が潰れて黒く見えます。
周りの枠を装飾する毛糸は赤のままなのに場所や光、様々な条件によって色の違いが出てくる、赤だと思ってたのに急に黒く見える、こうして人は間違えながら手探りで本当の運命の赤い糸を見つけなくちゃならない。」
そんな恋愛に対する思いを作品にしたそうです。
また、なぜドイツ語かというと、地面に描かれた赤い糸の道しるべにしたがって歩いていくと町中を散策できるドイツの観光地ハノーファーを意図しているそうです。
また、会場内のBGMは、霜焼きトマトさんの相方のセキグチリンゴさんと酒井遥さんの2人がそれぞれ2曲ずつ作っています。
2人に対しては、「青域」と「回転遊園地」の曲名・1曲4分位というルールだけを与えて、あとはお任せだったそうです。会場の雰囲気とマッチして、水の中を漂っているかの様な心地のよいBGMでした。