組長の霜焼きトマトさんが考えるアートとは?
会場を回った後、最後に組長の霜焼きトマトさんからお話をお伺いしました。
――昨年は2つのものを混ぜて危険であることを表現する「混ぜてるもう危険展」を行っていたそうですね。これまでアート界隈でどういった仕掛けをしてきたのか、そして今後どうした仕掛けをしていきたいのか教えて下さい。
僕は、普通じゃ嫌なんですよね。展示会に対しても、「普通」があることに気付きました。その中で、考え出された「これ面白いんじゃない」ということが、気付いたら仕掛けになっています。
毎年グループ展を1回やることは決まっていて、来年のルールは既に発表していますが、実は3年後のルールまではもう頭の中で決まっています。
来年は「約1㎥展示会」です。表面が扉として開く、自動販売機と同じ大きさの真っ白な箱を、参加者分を用意して並べます。霜焼組は、アーティストが違うアーティストを招待していくねずみ講形式をとっているので、来年は20人のアーティストが参加する予定です。お客さんが扉を開けていくことが面白さに繋がるのかな、と。
――アートによるエンターテインメントの意義とはなんでしょうか。
僕は今のアートで若い人達がやっていることに対して、疑問があります。アートは敷居が高いんですよね。
僕らのアートの表現は人に見せたくてやるものなのに、今は最終的に画廊や有名な人に買ってもらうことが目的になっている。アートによるエンターテインメントとは、アートに興味がない人たちにも楽しんで貰うということだと思います。
――どういった仕掛けをすると面白いのか、それを生み出すまでの過程を教えて下さい。
僕が一般人として行きたいなと思わせる特徴がなんだろうということを、ずっと追及して生活しています。そのため、昨年はテーマの出し方(思考)の縛り、今年は色彩の縛り、来年は空間の縛りを設けています。
――こういった表現方法に行き付いた理由を教えて下さい。
21歳位の時に個展をデザインフェスタギャラリーで行いました。その後、お誘いを頂いてデザインフェスタでの出展を行うことになったので、様々な人の展示会を見て回りました。その時に、共通して思ったことが、「この人達を全く知らない人が見たら何を思うんだろう」でした。
テーマを設けた展覧会の名前を見て、想像して現地に行っても予想の範囲を超えることがありませんでした。
名前が付いている展示会の段階で、ある程度空間を提供しているのだから何かしら人に見て貰う時に楽しんで貰う心がけが必要なんじゃないかと思いました。
そういう展示会はないのかと考えた矢先、「もう自分でやっちゃおう」と思ったんです。
最終的に、展覧会の統一感・全て新作・お客さんに対して面白いアプローチが出来ること全てを解決できる手段として、1つルールで人を縛るということを思い付きました。
――どんなところからアイデアのヒントをもらっていますか。
自分の作品は、身近にある普段は何も思わないけど深掘りすると強いメッセージが変わるものを無意識に探して拾ったりしています。日常生活で変なことを考えながら生きているというか。夕方のエンタメニュースみたいな地域のちょっとした情報は見たら覚えていますね。
今回の展示会が「青域」になった理由は、六本木の青いイルミネーションについて知っていたことやこれまで青い光についてのニュースを見たものが蓄積されていった結果、ある時青い光だけで照らされた部屋を見たことがないなとハッと思いついたからです。誰も見たことがないし、面白いのではないかなと思いました。
この一風変わった展示会は、とても刺激的でした。
「色々な人に見て貰いたい」「お客さんに楽しんで貰いたい」
「霜焼組」の方々、そして組長の霜焼きトマトさんから、私はこの思いを強く感じました。来年の「約1㎥展示会」。この展示会がどういったものになるのか、全く想像が付きません。今から本当に楽しみです。