今作は「いつもより個人的な想いが多かった」
――印象に残っているシーンってありますか?
過激なシーンが多いんですけど、僕の中ではちょっと笑えるシーンがあるんですよ。
三井くんどうしてそこまで行っちゃう? ブレーキないの? みたいな部分が、演じているとかわいく見えちゃう瞬間があって。
で、そこが映画となったときに、自分が現場で感じていたときよりもユーモアがあるように感じられたから、そこは印象的でしたね。
オムツをはいてしまったり、自分にスタンガンを打ってしまったり。自分で演じているから、観ている人とは違う感じ方をしているとは思うんですけど、ああいうシーンは好きでしたね。
面白いな、コイツって(笑)。
――私も観ていて、三井は極端なキャラクターなんですけど、そういう部分でなんか愛おしく感じたり、共感できたりするなって思っていました。
そうなんですよ。そういうところが三井なんですよね(笑)。
――今作について、「いつもより個人的な想いが多かった」とコメントされていましたが、それは具体的にはどういうことなんでしょうか?
僕が30歳になった年に撮影した作品だったので、それですね。
20代の後半は、30代になることを楽しみに過ごしていたくらいなので、「この一年で自分、どれだけ変われるのかな?」という気持ちがあって。
自分の感情は現場で終わっていけばいいものなのに、どこかで褒めて欲しいのか、評価されたいのか。それは僕自身が、じゃなくて、映画が、ですけど、そういう欲が出ていると思う。
――周りの人の意見とかって気になりますか?
前は気にならなかったんですけど、ここ数年は気になり、人の意見は聞いた方がいいなと(笑)。
今まで「俺は面白いと思うけど」「俺はつまらないと思うけど」と思ってきていたけど、「人はどう思うんだろう?」というのも必要かもって。
――そうすると今作の反応も?
楽しみです。ただ痛い映画にはなって欲しくないというか。経験として、痛みから感じることもあるじゃないですか。そういう映画になっていたらいいですね。
高良健吾の「気持ちを軽くする」手段とは?
――三井は人に認めてもらえないという思いを抱えて生きていて、一方で高良さん自身は人に認められている存在であるわけですが、認めてもらえないことへの思いをどう感じていましたか?
今の僕の状況は確実に人に裁かれるというか、評価される立場じゃないですか。
だから、ある意味で認められる、認められないということがすごくついて回りますよね。
10代、20代の頃は、そのことにイラついたりもしていたんですけど、今はそこはなくなりました。
全くなくなった、とは言えないですけど、この仕事をしている時点でそれも込みですよね。
――そういう風に切り替えられたきっかけって何かあったんですか?
もう自分の人生の半分以上、この仕事をやってきたんだなっていうのはデカいです。これからもその人生を生きていくので。
――常に人から評価を受けるって大変なことだと思うのですが、そういう気持ちを軽くする手段って何かあるんですか?
旅行。
――日常から離れる?
日常から離れる仕事なんですけどね(笑)。
周りに旅行好きな人も多くて、その人たちから聞いたり、読み物とかをしていて、「この人、ここに行って楽しかったんだ、じゃあ、自分も行ってみたいな」と思って行くことが多いです。
――三井は千尋から「三井くん」って呼んでもらったことを幸せな記憶として大事にして生きていますが、高良さんにもそういう他の人にとっては何気ないことだけど、自分にとって大切な記憶ってありますか?
結構あるんですけど、幼少期の話で言えば、僕、転校が多かったので、転校してすぐに話しかけてもらったり、「一緒に帰ろう」と言ってもらえたことはすごく嬉しかった記憶として残っていますね。その人たちとは未だに仲が良かったりしますからね。
――思い出だけじゃなくて、今も続いてるって素敵ですね。
ホントに僕が何者でもない頃から仲良くしてくれてるいので、それはありがたいなっと思っています。
この映画はどこかで誰かを認めたり、肯定する作品になっている
――最後に高良さんがこの作品から感じたことを教えてもらえますか?
三井に関して言えば、認めてもらえないということが、どれだけ純粋なものを歪めてしまうのかってことで、その怖さを感じたんですけど、一方で、認められること、肯定されることがどれだけ人を救うのかってことも感じました。
そして、この映画全体に関して言えば、仕掛けもあって、作りとして面白いと思いますし、痛い話ですけど、その痛みから感じられるものがあると思うんです。
痛みから生まれるものがこの映画には確かにある。暴力描写は激しいですけど、それと裏腹に感じられるものがあると思います。
――痛みから感じるものってすごくわかります。報道とかでは見せれられないものを、エンターテインメントである映画だからこそ描けているな、とも感じました。
報道にしても、一般の人にしても、世間はとにかくみんな裁こうとするじゃないですか。でも、この映画は誰のことも裁かないんですよ。
この中に出てくる歪んだ人たちを裁かないことが、救いになっていると思うんですよね。否定も肯定もせずに一つの“生”として扱う。そこなんだと思うんです。
今って罪と悪が一緒に捉えられるけど、罪と悪は別ですよね。罪を犯したからといって、悪ではないこともあるし、悪だけど、罪は犯してないこともある。
そういう風に白黒二つに分けられない、グレーゾーンってあるんだと。この映画はどこかで誰かを認めたり、肯定する作品になっていると思いますね。
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一つひとつの質問に真剣に、自分なりの想いを込めて答えてくださった高良健吾さん。
年齢も30代に入り、作品に対する欲も持てるようになったという、これまでとまた違った想いもこもった映画『アンダー・ユア・ベッド』は、高良健吾だからこそ、単なる衝撃作に終わらない深みのある作品となれたと感じる。ぜひ映画館でお楽しみください。
作品情報
『アンダー・ユア・ベッド』
7月19日(金) よりテアトル新宿ほか全国順次ロードショー
出演:高良健吾/西川可奈子/安部賢一/三河悠冴 /三宅亮輔
原作:大石 圭「アンダー・ユア・ベッド」(角川ホラー文庫刊)
監督・脚本/安里麻里 配 給:KADOKAWA