「褒めて育てよ」とよく聞きますが、「褒める」って一体どういうことなのでしょうか。
人は頭ごなしに否定されると心にシャッターを下ろします。でも、僅かでも努力していることを認められたら俄然、やる気が出ます。そんなお話です。
『1人でできる子になる「テキトー母さん」流子育てのコツ』の著者の立石美津子がお話します。
診察室でスマホを見ていた小学生
親子関係がうまくいかず、荒れている小学生がいました。病院での出来事、診察中、子どもがスマホを見ていたので、母親が「携帯見るのはマナー違反!先生の方を向きなさい!」と叱りました。すると子どもは切れてしまい、母親に殴りかかろうとしました。
すかさず医師は“殴りかかったこと”をダメ出ししないで、こう言いました。
「でも、お母さんが注意したら携帯から目を離しましたね。偉いと思います。」
そりゃそうです。携帯に目をやりながら、相手を殴ることなんて出来ませんから…。
しかも、子ども扱いしないで丁寧語で医師は話しかけました。
携帯を見ていたことを叱られ、殴りかかったことを医師と母親に同時に叱られたら、子どもは気持ちの持っていき場を失います。
一瞬、携帯から目を離したことを見逃さずに評価したプロの医師でした。母親はこのやり取りを見て「さすが先生!プロだ!私も見習わけなれば…」と思ったそうです。
筆者の仕事場で
筆者はかつて学習塾を経営していました。自分の生徒で“ないない尽くし”の子がいました。
「学力ナシ+忘れ物魔+私語ばかりする+隣にちょっかいを出す+脱走する」のオンパレードでした。
言葉は適切ではないかもしれませんが…「褒めて導きなさい」と頭にあっても“褒める材料のない子”でした。
この子は学校でも家庭でも叱られてばかりいて、耳にタコが出来ていました。この状態の子に更にネチネチ叱っても無駄だと思い、次のように言葉をかけていました。
授業態度や学力のことは置いておいて…
- 「雨なのに休まず来て偉いです」
- 「毎日、お風呂に入っているんですね。良い習慣が身についています」
- 「着ている服のセンスが良いです」
学習面や授業の姿勢を評価できなくても、それ以外の出来ている点を認めるように意識して言葉をかけるようにしていました。すると行動は改善されていきました。
親子の場合は感情も伴い、「良かれと思って、この子のために」と感じ、ダメ出しをしてしまいがちですが、なかなかこれではうまくはいかないのです。
どうすれば良いのか
人は否定されて「頑張って行動を改善させよう」とは決して思いません。言った相手を恨んでしまうこともあります。
何か注意したいと思ったら、評価できる点を必死で探すとよいです。そして、出来ていない点はこれからの目標として伝えればよいのです。
例えば計算問題の答えを全部間違っていても、「ほら、また間違って!」と言うのではなくこう言ってみましょう。
- 解答欄が空白ではなく、全部答えを書いているね。
- (字が綺麗だったら)字が綺麗だね。(※不正解と字の汚さは比例するので、あまりそういうことはないですが)
- 名前欄に名前を忘れず書いているね。
そして、「今度は一つでも正解できるよう頑張ろう!」と課題を与えるのです。