もし、子どもを望んでいないのに避妊に失敗してしまったら…。もし、自分や家族、友人が性被害に遭ってしまったら…。
『望まぬ妊娠』によって、人工妊娠中絶手術を受けるケースは少なくありありません。日本では、1年で16万人が人工妊娠中絶を受けています。
女性にとって精神的にも肉体的にも負担の大きい人工妊娠中絶。その可能性を避けるための手段の一つが、『緊急避妊薬』です。
緊急避妊薬の存在を知っておくことで、万が一のときの精神的負担や肉体的負担を軽減することができます。
緊急避妊薬について、避妊に関する問題に積極的に取り組んでいる薬剤師の水 八寿裕さんにお話を伺いました。
『緊急避妊薬』とは?
『緊急避妊薬』はいつ飲む?副作用はある?
――『緊急避妊薬』とは、どういったものなのでしょう?
水「緊急避妊薬は、『アフターピル』とも言われます。避妊の失敗、性犯罪被害などによる、意図しない妊娠を防ぐための緊急避妊法の一つです。
避妊が失敗したと思われる性交後、72時間(3日間)以内に飲めば、90%の確率で妊娠を予防することができます。
内服後、5~7日間、排卵を抑え、着床しにくく、そして精子が入りにくい状態にします。排卵を抑えた数日後には排卵するので、内服後は避妊が必要になります。」
――緊急避妊薬に副作用はあるのでしょうか?
水「嘔吐、頭痛、性器出血などです。
なお、内服後、2時間以内に何かの理由で吐いてしまったときは、再度内服しなければいけません。」
緊急避妊薬は高い?
――緊急避妊薬はどこで手に入れることができるのでしょう?費用は?
水「緊急避妊薬は、日本では、医師による処方を必須とする『処方箋医薬品』です。つまり、産婦人科を受診し、診察を受けないと手に入りません。
費用は、保険適用外の自費診療となるため、診察と薬を含めて、大体1万円から1万5千円ぐらいかかります。
先ほど『吐き出してしまった場合は再度内服が必要』と言いましたが、その場合、再度費用がかかることになります。
緊急避妊薬の処方後は、妊娠を防げたかを確認するため、3週間後には再度診察を受けることが必要になります。
また、この薬の性質を考えると、あくまでも“人生の一大事”という緊急的な場合のみの使用に留めるのが必要であって、その後の避妊方法では『低用量ピル』の使用ということも組み合わせて相談ができることがポイントです。」
注意点は?
――緊急避妊薬について、注意点を教えてください。
水「今はネットを通じで医薬品も手に入る時代ですが、緊急避妊薬は、前述したように医師による処方が必須な『処方箋医薬品』です。
日本で承認されている緊急避妊薬は、あすか製薬株式会社の『ノルレボ錠1.5mg』、そして富士製薬工業株式会社の『レボノルゲストレル錠1.5mg「F」』(ジェネリック医薬品)の2種類のみです。
これらは市販もネット販売もされていませんので、ネットなどで探して購入しようとしないでください。
海外では市販薬として販売されている国もあるので、海外の製品がネットで流通しているケースもありますが、ニセモノだったり、粗悪品である可能性が高いです。」