90円でソウル下町ローカル路線バスの旅

「鍾路09」マウルバスの折り返し地点、水聲洞渓谷

韓国ドラマウォッチャーなら、緑色のマイクロバスが住宅街を走る場面を見たことがあるのではないだろうか。

あれは日本でいうコミュニティバス。韓国ではマウル(村)バスと呼ばれている。

ソウルや釜山をはじめとする大都市の交通手段で、大型車が通れない狭い道や急坂が続く住宅地と最寄りの地下鉄駅などを結んでいる。

韓国では通勤通学に自転車を使う人が少なく、ソウルや釜山は東京や大阪より坂が多いので、マウルバスは重要な交通手段だ。

外国人旅行者がマウルバスを利用する機会は少ないだろうが、ソウルの下町的な風景を気軽に楽むことができるので、リピーターにおすすめだ。

料金はたったの1000ウォン(約90円)、交通カードを使えば9000ウォン(約80円)なので気軽に乗れるし、始点から終点まで乗っても30分ほどだ。途中、気になるところがあれば、途中下車して散歩したり、お茶したりするのも楽しい。

マウルバスは短い間隔で運行されているので、停留場の場所を覚えておけば、散歩の帰りにまた乗って最初の乗車地に簡単に戻ることができる。

マウルバスデビューに最適なのが、南は日本の旅行者にもなじみのある崇礼門(南大門)から市庁駅や光化門、景福宮駅、通仁市場などを通り、北は水聲洞渓谷まで行く「鍾路09」という路線名のバスだ。

おすすめは、油トッポッキで有名な通仁市場で降りて、そのバスが進んで行く方向にのびるカフェ・レストラン通りを散歩し、バスの折り返し地点(終点)である水聲洞渓谷まで10分ほど歩いて行くコースだ。

ソウル中心部からバスで3~4キロの場所とは思えない水聲洞渓谷

水聲洞渓谷は仁王山の登山口で、ついさっきまでソウル中心部の喧騒の中にいたのが嘘のような水音と鳥の声、青い空と木々の緑、清々しい風に出合える場所だ。ここでは、舗装されている登山道を10分ほど歩くだけでもリフレッシュできる。

帰りは折り返し地点からマウルバスに乗ってソウル中心部に戻ってもいいし、再び通仁市場まで歩いて市場見物するのもいいだろう。

(つづく)

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鄭銀淑:ソウル在住の紀行作家&取材コーディネーター。味と情が両立している食堂や酒場を求め、韓国全土を歩いている。日本からの旅行者の飲み歩きに同行する「ソウル大衆酒場めぐり」を主宰。著書に『美味しい韓国 ほろ酔い紀行』『釜山の人情食堂』『韓国酒場紀行』『マッコルリの旅』など。株式会社キーワード所属。