言葉にならないような、立ちはだかる壁に遮られて届かないような心の叫びです。私はそれを無視していたのかもしれない、という気持ちになりました。そして次第に、この文章を小冊子ではなく書籍として世に出すことが、自分の役目なのかな、と思うようになったんです。
ですが、たくさんの人に読んでもらうためには自分ひとりの力では足りないと思い、コミュニティを学ぶために入った、佐渡島庸平さん(「ドラゴン桜」「宇宙兄弟」などを手がけた編集者)主宰のコルクラボというオンラインサロン内で相談したところ、複数の方からクラウドファンディングという言葉が出てきて…。
まさか自分がクラウドファンディングをやるとは夢にも思っていませんでしたので、戸惑ったのですが、コルクラボではちょうど挑戦する人を後押しする仕組みができたり、助けてくれるメンバーがたくさんいてくれたことで、HSCを世に広めたいという想いがクラウドファンディングなら叶うのでは、と思うようになりました。
そうして、本を作るというゴールに挑戦してみることになりました」
自分の子どもがHSCだった、という人が圧倒的に多かった
――無事、目標額に達成し、さらに目標額を上げて、その額も達成されたのですよね。それまでHSCを知らなかった人たちにも声が届いた、という手ごたえは感じられましたか?
k「そうですね、ただ、クラウドファンディングを始めてみて、本当に怖かったんですよ。いったいどれくらいの人が賛同してくれるのか、わかりませんでしたし。
でも、その中で一緒に力になってくれる人たちとの輪がSNSなどで広がっていき、支援やメッセージもいただき、想像以上に賛同を得ることができました。
特に感じたのは当事者が多い、ということでした。自分の子どもが、もしくは自分がHSCだった、という人が圧倒的に多かったです」
――HSCという言葉を知って、学校に行きたがらない我が子にどう接していいか、答えを得た読者も多かったのではないかと思います。初めに感じていた怖さも、杞憂に終わりましたね。
k「いや、ずっと怖かったです(笑)。 目標金額を達成しないと実行できないというシステムを選んでいたのですが、達成するまではずっと緊張していました。HSCのことは、発信すればするほど広がっていくものだという実感がありましたね」
――それまでは個人的なことだった活動がどんどん広まっていくにつれ、責任も生じてきて、怖くなったということもあるのでしょうか。
k「それはありますね。たくさんの人を巻き込んで、力を借りているのだから、必ず成し遂げなくてはならない、後には引けないという責任を感じていました。でもその分、応援してくださる方の存在が本当に温かく救いに感じられました」
――先日、ホームスクーリングで育っている小学生の男の子がYouTubeで発信した動画が、「学校は行くもの」と考えている人たちと思われる層からネットで攻撃されていましたが、そういったネガティブな反応はありませんでしたか?
k「そのような類の反応はなかったです。HSCの認知の輪が広がったのは、やはりメディアの力が大きいですね。テレビで初めてHSCが取り上げられたのと、新聞、ウェブニュース、雑誌などでも取り上げられることが増えているので、認知度の広がりは実感します」
――よかったです! HSCという概念を知らないと、子どもが誤解されて、学校に行きたがらないのはやる気がないだとか、甘えだとか、もっと強くならないと、といったことを言われてしまうと、本書にありましたね。
k「そうなんです。これは非常に傷つきますし、無力感に圧し潰されてしまって本当につらいです。気質が学校に合わないのはその子のせいではないのに、自分を否定されたら、生きた心地がしないと思うんです。気質に合った環境が選べないと、子どもは本来なら感じなくてもいい劣等感や自己否定感を持つようになることがあります」