HSCの特徴
ここであらためて、HSC(とても敏感で感受性の高い子ども)について、HSCの概念を知らしめることになったきっかけの書籍『ひといちばい敏感な子』などから引いて、説明しておきたいと思います。(ちなみに、大人の場合は、HSP(Highly Sensitive Person)と呼ばれます)
HSC(HSP)は、アメリカの心理学者エレイン・N・アーロン博士によって提唱された概念です。あくまで気質のことを指し、障害や病気ではありません。そのため、医療従事者の間であまり知られていないことが、一般の周知が進まない理由とも考えられています。
アーロン博士が行ってきた調査や研究によると、子どものほぼ5人に1人はHSCに該当すると言われ、日本人の場合、それ以上であるという見方もあります。
HSCの性質には、次の4点が顕著にあるそうです。
- 深く処理する
- 過剰に刺激を受けやすい
- 全体的に感情反応が強く、特に共感力が強い
- ささいな刺激を察知する
さらに、koko kakuさんのご主人であり、精神科医でもある斎藤 裕さん考案の【HSCの10の特徴】があります。
- 刺激に対して敏感
- 刺激を受けやすく、疲れやすい
- 慎重に行動する
- 共感する能力が高い
- 自分と他人との間を隔てる「境界」が薄いことが多い
- 鋭い感性や深みのある考えを持つ
- 内面の世界に意識が向いていて、豊かなイマジネーションを持つ
- 人との深いつながりや主体的に生きることを好む
- 自己肯定感が育ちにくい
- 自分の気質に合わないことに対して、ストレス反応が表れやすい
こういった性質・特徴を持つ子どもにとって、学校という集団生活、一斉授業をベースに置く環境が、安心・安全を感じられる場所ではないということは、容易に想像できると思います。
では、再びインタビューに戻り、今度は斎藤 裕さんにもお話を伺います。
子どもの言語化できない叫びにどう気づくか
――言葉で「学校に行きたくない」と言える子はまだいいですが、自分の気持ちを言語化できない場合、親はどう子どもを受け入れていったらいいのでしょうか。
斎藤(以下斎)「そうですね。本の中に、【学校との相性を知るための20のチェックリスト】を載せているのですが、10以上当てはまると、子どもにとって、学校に行く負担はかなり大きいと予想されます。
こうしたチェックリストと照らし合わせて、親は初めて実感するんですね。子どもの立場に立って、子どもの気持ちが初めてわかったという風にハッとされる方を見てきました」
――チェックリストの中には、「ストレスに対する反応が学校と関連した状況で繰り返される」というものもあります。例として、おなかが痛くなる、熱が出る、便秘になる、といった身体的な症状が挙げられていますが、少し前までだったら「学校に行きたくないから仮病を使っているんでしょ」と叱る親もいた気がします。
斎「身体に出ているのは、気質に合わないことに対するストレス反応、つまり拒否反応なんです。身体はごまかしが効きませんから」
――本の中で、日本では有数のHSC(HSP)を診る精神科医である長沼睦雄先生と、koko kakuさんとの対談が載っていますが、長沼先生ははっきりと、「身体、腸も含めて精神」だと言われています。HSCの気質を持つ子どもには、学校という場にいることが、精神的に耐えがたいほどの苦痛なのですね。
斎「ところが、学校という制度は、ある年齢になったら入学して通うものとされてきていますから、親は子どもを学校に行かせなくてはいけない、適応させなくてはいけない、それが親の果たす責任だと思ってしまいます。
HSCの場合、本来であれば、新しい環境に入っていく時は、目の前の子どもの様子を見て、今なら大丈夫かな、と確かめながらやってみて、まだもう少しかかるな、と判断したら、しばらく時間をおいてからまたトライしてみることが望ましいのです。しかし、子どものペースに寄り添って、子どものタイミングで適応させていくことよりも、決まっている制度に合わせるほうに親の気持ちが行ってしまうと、親子間の愛着関係に傷が入ることがあります」
――愛着関係に傷、ですか。