狂気的なシーンでは「ごめんなさい」という気持ちも
――今回の映画では飯豊さん演じるキラを突き落とそうとするなど激しいシーンがありましたが、特に気をつけていたことなどありますか?
窪田:飯豊さんには、「芝居ってどうやってやるんですか?」って言われて、「現場でその時生まれたものがすべてじゃないかな」って、あんまり助言とか出来なくて。
キラに限らず零も含め、どれだけその2人の気持ちや裏の顔を引き出せるかというのは牧生の役割でもあったので、極力激怒させられるくらい、対峙するシーンは意識をしてやっていました。
突き落とすシーンはもちろん命綱などを使って安全第一でやっていましたけど、でも牧生の感情として「死んじゃえ」みたいな、そういう気持ちでやっていました(笑)。
――飯豊さんがそういうシーンがあった後、必ず抱き寄せて「大丈夫?」って声をかけてくださったと話していました。
窪田:ああ、そうですね。「いなくなれ」みたいな気持ちはもちろん芝居の中だけの話なので(笑)。
窓から体の半分以上が飛び出ていたのはやっぱり逆の立場だったら怖いので、ごめんなさいという気持ちもあり。「いなくなれ」と「ごめんなさい」という想いが交互したシーンでしたね(笑)。
藤ヶ谷太輔は「引き出してくれるし、安心感で包んでくれる」
――撮影現場では藤ヶ谷さんとはどんなお話をされていたのでしょうか?
窪田:話している内容はくだらないことが多くて(笑)。でも現場で話すよりも映画のPR活動をさせてもらってから2人で一緒にいる時間が多くなったと思います。
4年前くらいにお仕事をご一緒させてもらってから変わらない太輔くんで、明るい楽しい気持ちで『MARS』という映画に入って欲しいなという想いがあったので、けっこう振り切ってちょっとおふざけしながら(笑)、PR活動をさせてもらってました。けど、そうやって出来るのもなんか太輔くんだからですし、1人になるとそれは出せないので、太輔くんの力ってすごいなって思います。
引き出してくれるし、安心感で包んでくれるっていうか。
時に同じ目線に立って友だちにもなってくれるし、1つ上の先輩として接してくれる時もありますし、同じ役者という立ち位置で対等に見てくれているところもある。そういういろんなバリエーションを出してくれるので、つい頼ってしまう部分があるんです。
涙ぐむつもりはなかったのに……思った以上に自分の中に入り込んでいた
――藤ヶ谷さんとの撮影で印象に残ったことを教えてください。
窪田:零とのクライマックスのシーンは、ずーっとやってきた彼への執着っていうものが完全に途切れてああいった形になったんですけど。
言葉ではなくて、3か月間ずっと一緒にやらせてもらって彼の作ってきた零と離れる、っていう気持ちに自然となれたのがけっこう強くて。別に涙ぐむつもりもなかったですし、最後のセリフはわりと牧生なら楽に言える言葉なのかなって思ってたんです。
でも、3か月間の現場での時間っていうのがあの瞬間頭のなかに走馬灯のように流れ出てきて、「太輔くんといろんなシーン撮ったなぁ」っていうのが、あの時すごく思い出せたのはあるんですよね。
それくらい彼の記憶が自分の中に入っていたんだなって思わせてくれた瞬間でした。
――では、あのラストのシーンは窪田さんも牧生と気持ちがリンクしたということですか?
窪田:そうですね、けっこう切り離したいんですけど、どこか想像していたものと全然違うものになったなっていうのはありましたね。