4.朝を有効活用すること
井上「私の場合は娘が0歳~2歳の間の学生生活でしたので、まだまだ寝かしつけが必要な時期。翌日の課題が溜まっているのに寝落ちして、深夜に起きて焦る、なんてことはしょっちゅうありました(笑)。
そんなバタバタを経験したからこそお伝えしたいのですが、できるだけ勉強時間は、早朝に確保することをおすすめします。
乳児は別として、1歳以降の子どもは朝4時~6時前はまだ寝ているケースが多いと思います。夜は子どもと一緒に9時前に寝て、自分だけ4時頃に起きて一足早く勉強時間に充てる。そんなスタイルがおすすめです」
5.子育て中ということを研究・学業に最大限活用すること
井上「子育てをしながら学ぶ、ということはもちろん大変なこともたくさんありますが、逆に子育て中だからこそ気づく視点や学業にも活かせることがたくさんあるのでは、と思います。事実、私の修士論文もベビーベッドを使った研究内容で、娘がたくさん登場しています。
時間がないからこそ、逆に子どもとの時間や体験を学業にたくさん活かすことが、逆にアドバンテージ(強み)になるのではないでしょうか。そんな風に考えて、子育て中の学びの機会がもっともっと多くのママたちに広がって欲しいと思っています」
修士課程を育児中に修了した理由
ところで、修士の学位を育児中に取得しようという発想はなかなか生まれませんが、そこにはどんな理由があったのでしょうか?
井上「一番の学びのきっかけは、出産後の自分のキャリアがまったく思い描けなかったことです。
前職では仕事が楽しくて楽しくて、平日も土日も関係なく朝から深夜まで働くようなスタイルで過ごしていたのですが、妊娠・出産を機に価値観が大きく変わり、子どもとの時間を大切にしながらも働き続ける方法を考えるようになりました。
かといって、大好きだったテレビ局を離れて、自分が本当に夢中になれるものをすぐに見つけられたわけでもなく、まずは大学院に入って、これまでの自分自身のキャリアを俯瞰しながら、次の道を考える2年間にしよう、くらいの曖昧な志で最初は考えていたと思います」
そして井上さんは修士の学位を見事、取得しました。どんなメリットを感じているのでしょうか?
井上「実際に2年間、大学院で学んで良かったと思うことは大きく2つあります。一つは研究を通して自分の強みやこれまでのキャリアを客観的にフィードバックしてもらう機会となり、在学中に広報PR事業で起業することにつながった点。
もう一つは、20代から社会人入学の学生まで多種多様(かつ多国籍)な同級生、先輩との出会いによって、私自身のこれまでの固定概念が大きく取り払われ、年代を超えた大切な人間関係、ネットワークが築かれたこと。
実はいまの私の広報PRの個人事業においても、大学院で出会った同級生や後輩たちと深く関わって仕事をしています」
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自分の出産・育児後のキャリアを思い描けないという悩みは、決して他人事ではないのではないでしょうか。ぜひヒントにして、今からでも自分の学びに活かしてみるのもよさそうです。
【取材協力】井上 千絵さん
2005~2016 年 民放テレビ局に勤務、うち8年間は報道記者、直近の2年間は宣伝広報。2016年 結婚・出産を経てテレビ局を退職し、慶應大学大学院メディアデザイン研究科修士課程へ。
2018年 INOmediaとして独立。現在は株式会社ベンチャー広報の週3会社員と個人事業の複業中。スタートアップの企業を中心にコミュニケーションデザイン・PR戦略を担うと同時に、テレビ局のコンテンツビジネス事業やWEBメディアMolecule(マレキュール)編集長など、メディア側として発信に関わる事業と両軸で活動している。