七転福音(福沙奈恵)、クラリオン(沼倉愛美)『LoSe±CoNtRoL』(『紅殻のパンドラ』ED)
2016年度の上半期において、チアフルな"テクノポップ"の名アニソンとして推したいのが、この『LoSe±CoNtRoL』。士郎正宗先生によるサイバーSFコミックの名作『攻殻機動隊』のスピンオフ的な作品である『紅殻のパンドラ』のエンディング曲です。
歌うは、本作で主役となる全身義体の少女、七転福音を演じる福沙奈恵さんと、福音を守護する美少女型アンドロイド、クラリオン役の沼倉愛美さん。
アニメのキャラクター同様に、チャーミングな声質を持つ二人の歌声とユニゾンが何とも可愛らしく、また、曲間に挿入されるラジオ番組風の台詞パートが各エピソード毎に変化するというギミックも何とも楽しい一曲でした。
クリエイター陣が非常に豪華な点もポイントで、作詞と作曲を大人気"アニソンシンガーソングライター"の「ZAQ」さん、そして、編曲を数多くのアニソン、アニメ・サントラを手掛ける音楽ユニット「TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND」が担当しています。
アニソンシーンの有名アーティスト二組による、まさに「夢のコラボ」が生んだこの曲。ZAQさんの奔放なメロディとリズムが、TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDのピコピコキュンキュンなサウンドに再構築され、まさに完全無欠のテクノポップナンバーが誕生しました。
80'sへの愛情とリスペクトをタップリ盛り込まれたサウンドと女性声優さんの愛らしい声が幸せな結びつきを果たした上半期イチオシの名キャラソンです。カップリングに収録されている福音とクラリオンのソロバージョンもそれぞれアレンジが異なっており、その違いを楽しむのも一興。サービス精神タップリの豪華盤です。
藤原大輔『Check the Back Up』(『とんかつDJアゲ太郎』メインテーマ)
漫画ファンと音楽ファン、双方から大人気の漫画『とんかつDJアゲ太郎』のアニメ化は、2016年上半期のビッグニュースの一つでしたよね。
しかも、アニメ版の監督は大地丙太郎さんということで、大人気漫画とコメディアニメ界のベテランクリエイターの邂逅によって生み出される笑いのパワーがファンを魅了した作品です。
また、アニメ本編の楽しさに加えて、ANIさん(スチャダラパー)やサイプレス上野さん(サイプレス上野とロベルト吉野)、Kダブシャインさん(KGDR)にMummy-Dさん(Rhymester)といった有名ヒップホップ・ミュージシャンの超豪華な客演も見どころの一つでした。
勿論、アニメ、漫画ファンだけにとどまらず、様々なカルチャーとシーンにアプローチできる作風が魅力の『とんかつDJアゲ太郎』らしく、音楽ファンにもシッカリと目配りが行き届いており、劇伴を担当する藤原大輔さん(MU-STARS)が辣腕を振るうサウンドトラックは大充実の出来となっています。
メインテーマの『Check the Back Up』は、本格派のブレークビーツナンバーで、クールなインスト"アニソン"として、あらゆるボーダーを飛び越えていく力強さを感じられる楽曲です。
ちなみに、藤原さんは人気インディーレーベルである「カクバリズム」の所属アーティスト。同じくカクバリズム所属のサイトウ "JxJx" ジュンさん(YOUR SONG IS GOOD)もゲスト声優として参加していたりと、本作はヒップホップやクラブ・ミュージックファンのみならず、インディーロックファンにとっても見逃せない音楽的トピックがテンコ盛りでした。
カクバリズムのようなおもしろいレーベルがアニメの音楽を手掛ける……これもまたアニメと音楽の幸せなクロスオーヴァーですよね。
fhana『虹を編めたら』(『ハルチカ~ハルタとチカは青春する~』OP)
初野晴氏の推理小説シリーズをP.A.WORKSがアニメ化した『ハルチカ~ハルタとチカは青春する~』。高校の吹奏楽部員である穂村千夏(チカ)と上条春太(ハルタ)の男女二人を主人公に据えての一風変わったミステリーが楽しめる作品でした。
ストーリーのメインとなるミステリー要素に加えて、青春ストーリーや恋愛モノの側面もあった本作のオープニングを色鮮やかに彩ったのが、「fhana」(性格な表記は、一つ目の"a"の上にアキュート・アクセントが付きます)の『虹を編めたら』です。
2013年に『有頂天家族』のエンディング曲『ケセラセラ』でデビューし、颯爽とアニソンシーンに登場したfhanaは、その洗練されたサウンドとポップ・フィーリングを武器に次々に名曲を世に送り出し、今やシーンにおいて決して欠かすことのできない存在となっています。
この『虹を編めたら』では、これまでの都会的な音楽センスはそのままに、キーボーディストの佐藤純一氏のヴォーカルを大きくフィーチャーすることで、音の厚みと表現力を更に高めた歌世界を見せつけてくれました。
溌剌としたメロディと、メインヴォーカリストを務めるtowanaさんと佐藤氏の声の掛け合いが堪らないこの曲。そこから生まれる圧倒的な幸福感には、ただただ涙腺が緩んでしまいます。
こちらの矮小なイマジネーションなど遥かに飛び越えて、"ポップス"という音楽的表現の高みを次々に踏破し続けていくfhana。「一体、このバンドは僕たちリスナーをどこまで連れて行ってくれるんだろう?」「次は、どんな景色を見せてくれるんだろう?」という期待に思わず胸が震えてくる快心の楽曲です!