焼くしか芸がない食材だと思っていた。もちろん、トロトロになるまで煮込んだフレンチや洋食屋の一品も旨いが、高級すぎてなかなか手が出ない。
牛たんの話だ。
ただ焼くだけでもなく、高級でもない、庶民的な牛たん料理を食べさせてくれる店はないのか。
長年そんなふうに思ってきた。
居酒屋が軒を連ねる新橋に、廉価で牛たん三昧をさせてくれるバルがオープンした。
テーブル席も備えた、スタンディングスタイルの「新橋炭焼牛たん本舗」だ。
新橋炭焼牛たん本舗
「まずは『ゆでたん』を食べてみて」とオーナーシェフの松永藤吾さんにすすめられた。
はたして茹でただけの牛たんが旨いのか。
「まあ、そう言わず食べてみてくださいよ」
ゆでたん
出てきた料理を見て、一瞬腰を引いた。真っ黒なのだ。黒の正体は粒黒胡椒。
最後に、食べてまたびっくり。やわらかく茹でてあるだけでなく、出汁の味もふくんでいた。
「利尻昆布と本枯鰹節でひいた出汁で8時間炊いてあります」
フレンチでもなければ洋食でもない、和食の技を駆使した牛たん料理があったとは。
1枚380円は高いような気もするが、かなり厚いので、お値打ちといえるだろう。
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