子どもの自己肯定感を奪ってしまう叱り方
――子どもの成長を見守りたいとは思いながらも、つい叱ってしまう、そんなときはどうしたらいいものでしょうか。
箕浦:叱り方はとても重要ですよ。叱り方を間違えると、子どもの自己肯定感を奪ってしまいます。
叱るべきときにはしかっていい。命に関わることや、他人に迷惑をかけることについては、しっかり伝えてあげるべきです。
ただ、ダメなところばかり叱るのはNGです。
失敗しようと思ってやっている子はいないんですよ。お手伝いをして子どもが食器を割ってしまったとき、「あなたに頼まなければよかった」と言ってしまう。そんなに強く言うつもりがなくても、つい感情が先走ってしまうんですよね。
でも、そういう一言が、子どもの自己肯定感を奪うのです。
私は「どんなことでもプラスで終わってください」と言っています。
厳しいことを言ってもいい。でも、最後は必ず「よかったね」で終わらせてあげてください。
テストの点にしても50点だとしたら、まずできた50点をほめる。子どもだって、できたら100点をとりたかったはずなんです。その気持ちをどう汲み取って、次につなげてあげるか。
「頑張ったね。残り50点をどうすればいいか、一緒に考えてみよう。今回、間違いに気づけてよかったね」と。
その「よかったね」の一言が、子どもにとって安心と「次は頑張ろう」と前向きな気持ちにつながるのです。
――最後が大切なんですね。
泣く子ほど、伸びる!?
箕浦:あと、勝負事でわざと負けないことも大切です。手加減はなし。親が本気になればなるほど、子どもも本気になる。大人の本気を見せることが大事。
配慮の中では子どもは育たないというのが私の信念です。子どもの世界に、「配慮はない」のです。だから、大人も本気で、そして全力でやるべきだと考えています。
負けて泣くということは、決してマイナスではありません。私たちはあと伸びするバロメーターとして見ています。“将棋で泣く”、“サッカーで泣く”、いいことじゃないですか。
逆に「負けちゃったけどいいや」みたいな子の方が心配です。
勉強ができなくて泣く子もいますが、その一問にそれだけ命をかけているということ。どんなに難しい問題が出ても、答えは聞きたがらず、自分でなんとか解きたいと思う。その気持ちが、社会に出て困難に直面しても、「自分でなんとかしたい」と思って試行錯誤しながらも自分で解決策を見つけることができる力につながっていきます。
そういう子はきっと社会で活躍できる大人へと成長していけるでしょう。
――悔し泣きはその先の成長のバロメーターというわけですね。
箕浦:そうです。そして、親が答えをすぐに言わないことも大切です。
子どもの「困った」には共感だけしてほしい。親が答えを先に言ってしまうと、「考える」ことが子どもの中で抜け落ちてしまいます。
社会に出たら答えを教えてくれる人もいないし、そもそも「これ」と言える答えなんてありません。だからこそ、幼児期でも「どうしたらいいのか」を自分で考えることがとても重要なのです。
お母さんも、できることからでいい
――いざ子どもと対峙すると、なかなか実行できないのですが…
箕浦:できないこともたくさんありますよね。だからこそ、できることだけでいいと思います。
できるだけ思いやりのある言葉をかける。当たり前のことでも「ありがとう」「助かるよ」「えらいね」って言葉にすることです。
ちゃんと相手を思いやる会話ができている家庭であれば子どもは大丈夫なんです。
お母さんは充電器みたいなもので、いやなことがあって帰ってきても、子どもはおうちで、お母さんのそばで安心できる。「自分がここにいていい」「愛されているんだ」という安心感があれば、壁にぶつかっても頑張れるんです。
何かいやなことがあったのだろうなというときも、「お母さんにいってごらん!」と根掘り葉掘り聞かずに、「もしかして、○○だったんじゃない?」その一言でいいんです。
子どもは、自分を心配してくれたこと、自分のことを真剣に考えてくれたことが嬉しい。そこに親からの愛を感じるのです。そして、その愛がその子の自己肯定感につながります。
逆に、それがなければ、子どもは居場所がなくなります。
いつも通りの家庭が大事なんです。特別何かをするわけではなく、どんなときでも「おかえり」「ごはんできてるよ」がふつうに言える家庭であってほしいと思います。
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家庭でできることのひとつに、子どもの「自己肯定感」を育むという役割があります。
育児で余裕がなくなると、どうしても頭ごなしに怒ってしまいがちですが、少し心にゆとりをもって“思いやりのある言葉”をかけていきたいもの。お母さんは子どもにとっての充電器、もしかしたらそれだけでいいのかもしれませんね。
育児は決して平たんな道ではありません。そんなときこそ、プラス思考を身につけ、親子で一緒に乗り越えていけるよう、心がけてみましょう。