ここまで何百本も不育症の自己注射してきて赤ちゃんを守ってきたのに…そんなの嫌だ…!!


そんな時、助産師さんの1人が、

「うん!心拍回復したっ!もう大丈夫そうっ」

そう言い、イッキに場の空気がやわらぎ、ワタシも気が抜ける。

「丁度LDR(分娩室)が空いてるから、もうそっち移ってもらっておこう!」

…ということで、陣痛がないまま分娩室に移動することに。

その後も定期的に赤ちゃんの心拍を確認し、陣痛が無事に来たら『自然分娩』、もしまた異常がでたら『帝王切開』というプランで様子を見ることになりました。


担当の助産師さんに、「あのー、ごはんは食べたほうがいいですか?帝王切開の可能性があるんですけど」と聞くと、

「食べときましょう!もし吐いてしまっても自然分娩はじまったら体力勝負ですからっ(ニコっ)」

という返答。

まじかーー!!と気落ちし、結局病院食はいまいちノドをとおらず…

そんなこんなで結局、破水からまる1日たってもほんのり生理痛程度の微弱陣痛しか起こらず、
最終的に陣痛促進剤をつかうことになりました。

遂に陣痛スタート

旦那も病院へ駆けつけ、医師の説明を受けてから、点滴で促進剤を投与開始。
説明では「投与から30分くらいで効いてくる」とのこと…

遂に!ずっと待っていた陣痛が…!もはや待ちくたびれたぞ!コイコイコイ…っ

—————30分後—————


「…いっ…つぁあああっ…ぐっ…うううっん…っくあぁああ!!!」

痛い!痛いというより重い!…っというより腹が裂けるかのような衝撃…!

本陣痛ナメてましたよ!コイとか言ってすまなかったよ!!(号泣)

しかし、破水からまる1日の入院の間に、呼吸法は完璧にマスター済み!

「はい!ここで思いっ切り吸って―!止めて!はい吐いてーー!」とベテラン助産師K氏の誘導に沿って忠実にいきみ、
旦那には腰をさすってもらい、
自分はとにかく赤ちゃんの心拍を気にしていました。


——そう、この時点でもまだ赤ちゃんの心拍の低下を懸念して機械をお腹につけながら、異常が出たら帝王切開というプランは残っていたのです。

その為、何がキツかったって、水が飲めないのはもちろん、陣痛5分間隔くらいのタイミングで、帝王切開用の心電図データと胸部レントゲンを撮ったんですよ(汗)

もちろん分娩室の中に医者が機材を持って来てくれましたが、途中でお尻から赤ちゃんが出るかのような苦しい痛みが…

それでも自然分娩を目指し、なるべくたくさん空気が赤ちゃんに届くよう、

「ぐっ…ううん…ッスウウウーーーハァアアアーーーー…ぐむうんぬぬ…!!」と

おっさんみたいな声でうめき(甲高く叫ぶと呼吸が浅くなる為)、

旦那がずっと傍で「Chaccoうまいよ!!スゴイがんばってるよ!えらいよ、この調子!!」と励まし、

その言葉を支えに脱脂綿にふくませた水で唇だけ濡らし、あらゆる体位で押し出していき……

 

遂に助産師K氏から「うん!これならいけるよ!もう帝王切開じゃなくてこのまま自然分娩で産んじゃおう!!」という言葉が。
ワタシの精神エネルギーは満タンに!(燃)

これを機に続々と医師が到着、バタバタと赤ちゃんを取り上げる準備が始まり、ワタシはあおむけで足を開きTVでよく見るおなじみの出産ポーズに。

「吸って――!はい止めて!いきんでいきんでー!目線はコッチね!そう腰は浮かさないで!お腹よりお尻に力を入れる感じで、そうそうそう!いいよ!はいっフ――――って息吐ききる~~~」

この動作を1時間ほど続けたころ

「お母さん!頭が出たよ!ほら触って!もうすぐ逢えるから頑張って!」と助産師K氏。

手をひかれた先には赤ちゃんの髪の毛の感触が!温かい体温が!

「がっ…がんばりますっ! 産みますっ!!」

そう、ワタシは大声で叫び、最後のいきみに力を込めると、

————————ズルっ………スポーーン——

「…ふにゃぁ…おぎゃぁーーー!」

 

『わーーー!おめでとうございますーーーー!お母さんソックリな男の子ーー!!』

 

不育症を乗り越えて

なんと促進剤がスゴク効いて、投与からわずか3時間のスピード安産でした(驚)

みんなが笑顔のなか、涙目なのは旦那。

放心状態のワタシの手を握りながら
「よくやった!!ホント…ありがとうっ…!!」と。

そして、その握られた手の間に、きれいに拭かれた産まれたてほやほやのムスコがそっと手渡され、

初めて、3人揃っての家族写真を撮ってもらいました。

 

ここまで来るのに、どれだけみんなの助けをもらっただろう…

どれだけたくさん泣いただろう…

それでも、不育症をかかえながらでも、こんな元気な子を産めたんだ…

よかった…よかった……

 

今までの人生で長いこと自分に自信が持てなかったワタシは、不育症との診断を受け、さらに自分が価値の無い存在ではないかという錯覚におちいってました。

でも、出産だけは凄く頑張った。初めて自分で自分を凄いと思えた。


あの日、病気と向き合ってよかった。

あの日、注射をたくさん打っといてよかった。

あの日、ムスコが無事に生まれてくれて本当によかった。


あれから1年以上たった今でも、当時のことは鮮明に思えています。

それは、いつか2人目を妊娠できた時にまた乗り越えるべき経験として、刻んでいるからです。


私に自信を与えてくれたこの貴重な経験は、同じ抗リン脂質抗体症候群の方がたどる、妊娠出産のモデルのひとつでもあると思っています。


この体験談が、1人でも多くの不育症で悩む女性たちの手助けになることを、心から、祈っています!

 

妊娠出産編・完

(つづく)

 大手出版社から単行本を数冊発表し、現在は休業中の(元)漫画家。アシスタント業をメインにしながら、主婦業とお母さん業でも大忙しの毎日。夫である鈴木妄想とオタクトークで燃え上がるのも日課。息子の笑顔と各国アイドルのPVを見て癒されている。

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