アニメ版を観て「グッときた“動き”」のシーンは?

――3話「実績を打ち立てろ!」ですと、金森氏が宇宙船に乗っている空想シーンが追加されていました。

©2020 大童澄瞳・小学館/「映像研」製作委員会

大童:グッとくるシーンでしたね。メカなどの一定の構造を持ったものが近づいたり、離れたりするシーンを描くには、ブースターの間隔など様々なものの比率をしっかりコントロールしないといけません。それを1枚1枚の絵で描いているんだからすごいですよね。

宇宙船の船外ポッドが飛び出る瞬間、絶妙のタイミングでカットを変えて金森氏が壁から飛び出してくるところとか、その緩急のつけ方も素晴らしいですし、飛び出した勢いそのままに金森氏がハシゴをかけるところのスピード感もすごいと思います。

――これまでの放送(取材時は3話まで)で、いちばんグッときた動きはどこですか。

大童:3話で、金森氏が部室内で机を組み立てているシーンで、浅草氏と水崎氏が外から助けを呼んで、金森氏が面倒くさそうに立ち上がる動きです。

あとは、1話「最強の世界!」でコインランドリーに向かう3人のシーンもグッときました。

©2020 大童澄瞳・小学館/「映像研」製作委員会

原作では俯瞰で描いたシーンですが、アニメでは階段を降りる時に水崎氏が手すりに触れるなど、細かい芝居が追加されているんです。その後に続くカットも3人の歩き方にそれぞれ特徴が出ていて、それもグッときました。語り始めるときりがないくらい、グッとくるシーンだらけです(笑)。

――3話で、刀を振っているアニメーターのエピソードが描かれていますが、あれは大童先生が実際に観たものだったのでしょうか。

大童:どこかで誰かがやっているのを観た気がします。少なくとも『もののけ姫』のメイキングでは、宮崎駿監督が槍を構えるポーズをとって「えいやあ!」とやっていた記憶があります。

ああいうことは漫画家もよくやるので、自宅に刀の1本ぐらいは置いてあって、皆さんやっていると思うんです。

大童澄瞳先生

――2話「映像研、爆誕す!」では、風車が回る動画の原理がわかりやすく解説されていました。あれを見てどう思いましたか。

大童:「なるほど!」と思いました(笑)。風車の手前の羽根は速く動いて見え、奥の羽根は遅く見えて、上に来たら止まって見えるはずですけど、正面から見たら等速回転のはずなので、どうすれば上手く描けるんだろうってずっと悩んでいたんですが、あの解説で腑に落ちました。

アニメーションでしかできない方法でアニメーションの技術を教えてくれる作品になっていて、湯浅監督には「良い教材を作ってくれてありがとうございます!」という気持ちでいっぱいです。

©2020 大童澄瞳・小学館/「映像研」製作委員会

――アニメ化する時、制作陣にリクエストしたことや譲れなかった部分はありますか。

大童:大前提として譲れない部分はありません。僕が何を言ったとしても最終的には現場のご判断でお願いしますと伝えています。

ただ、唯一挙げるとすれば、浅草氏の持っているうさぎのぬいぐるみのデザインです。

僕はあれのモデルになったぬいぐるみといつも寝ているんですが、あれの可愛さがどこにあるのか知り尽くしていますから。単純な構造ですけど、目と口の比率のバランスが結構難しいんです。

――エンディングアニメーションを大童先生自ら描かれていますね。参加したことで画力が上がったとツイートしてらっしゃいました。

大童:エンディングは、背景の漫画原作を素材として提供して基本的にノータッチで、手前で走っている3人など動いているものは全部僕が描きました。プロの現場で描かせてもらうのは楽しかったです。

それに納期を守るためにはどう作業を配分して、どこまで突き詰めるべきなのかなど、新しい経験をさせてもらって非常に勉強になりました。