アニメーション特集 映画監督 原恵一の世界 ©藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 1988 ©藤子プロ/シンエイ ©臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2001 ©臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2002 ©2007 小暮正夫/「河童のクゥと夏休み」製作委員会 ©2010 森絵都/「カラフル」製作委員会 ©2013「はじまりのみち」製作委員会 ©2014-2015 杉浦日向子・MS.HS/「百日紅」製作委員会

10月25日(水)から開催される、今年で第30回を迎える「東京国際映画祭」。その中で、『クレヨンしんちゃん』シリーズや『河童のクゥと夏休み』『カラフル』などの劇場作品を手がけ、アニメファン以外にもその名が知られている原恵一監督作品の特集上映「映画監督 原 恵一の世界」が開催されることになりました。今回が監督にとって初の大規模特集となります。

この特集上映に際して、子どものころから監督の作品に親しんできたライターが、歴代作品について、原監督が考える「映画」について、たっぷりとお話を伺いました。

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  • アニメーション特集 映画監督 原恵一の世界 ©藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 1988 ©藤子プロ/シンエイ ©臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2001 ©臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2002 ©2007 小暮正夫/「河童のクゥと夏休み」製作委員会 ©2010 森絵都/「カラフル」製作委員会 ©2013「はじまりのみち」製作委員会 ©2014-2015 杉浦日向子・MS.HS/「百日紅」製作委員会
  • 映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲 ©臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2001
  • 映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国題合戦 ©臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2002
  • カラフル ©2010 森絵都/「カラフル」製作委員会
  • 河童のクゥと夏休み ©2007小暮正夫/「河童のクゥと夏休み」製作委員会

30年間、自分を裏切って作った作品はない

――第30回東京国際映画祭では、原監督の作品が大々的に特集されます。ちょうど監督としてのキャリアも30年となりますが、改めて振り返られていかがでしょうか?

原恵一監督 Tシャツの猫には新作のヒントが隠されているとか…?

:特集をしてもらえるくらいの映画作品を、自分はいつの間にか作ってきたのだなと。キッズ向けから大人向けの時代劇まで、ジャンルは色々ですけれど、自分で言うのもなんですが、ブレた作品は作ってこなかったなと、改めて思いますね(笑)。

――これまで『クレヨンしんちゃん』シリーズに絞った特集上映などはありましたよね。初監督作品である『エスパー魔美 星空のダンシングドール』から最新作の『百日紅 ~Miss HOKUSAI~』までを初めてまとめて振り返られたことで、一貫したものをお感じになられたのですか?

:そうですね。どこがと言われると非常に困るんですけど、どれを思い出しても「自分らしさ」のある作品を作ってきたと思っています。

――「自分らしさ」ですか。それぞれの作品において共通した心がけがあったのか、それとも作品ごとに「自分らしさ」ということに向き合われたのでしょうか?

:まあ、「自分らしさ」って言うよりは、「自分を裏切って作った作品はない」「自分に嘘をついた作品はない」っていう感じでしょうか。

『オトナ帝国の逆襲』以前には戻らないぞ、と言い聞かせている

――今回特集上映される作品について伺えればと思います。僕もそうなのですが、今のアラサー世代は、子どものころに監督が手がけられた『ドラえもん』と『クレヨンしんちゃん』をテレビでよく見て育ったんです。

映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国題合戦 ©臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2002

僕は初めて劇場に観に行った『クレヨンしんちゃん』の映画が『映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』で、翌年も『映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』を劇場で観たんです。

両作を観て、特に『戦国大合戦』に対して、「これは映画なんだ」ということを感じたんです。その部分というのが、ラストで(登場人物の)又兵衛が撃たれてしまうシーンなのですが、言葉は悪いかもしれませんが『クレヨンしんちゃん』の劇場版というくくりであれば、そのシーンが無くハッピーエンドで終わっても十分カタルシスがあったと思うんです。ですが最期に又兵衛が言う台詞があることで「映画」になっていると僕は思っています。

周りからの反発もあったかと思うのですが、先ほどのお話のとおり、自分に嘘はつきたくないという想いから演出されたのでしょうか。

:『オトナ帝国の逆襲』という作品が僕にとってすごく大きな転機だったので、それ以前とそれ以後では、作品を作ることへの意識が大分変わったんです。だから『オトナ帝国の逆襲』以前には戻らないぞと自分には言い聞かせているんですね。

それはどういうことかと言うと、「映画」というものは、当たり前と言えば当たり前ですけど、作り手が本気になってお客さんに挑むという行為が必要なんじゃないかと思ったんですよ。『オトナ帝国の逆襲』以降は、なるべくお客さんに本気で挑むような気持ちで作りたいなと。

計算ずくで色んな人の意見を聞いて、ものすごい綿密に脚本を作り上げて、お客さんを楽しませるアイデアをたくさん出して作るやり方――例えばディズニーのアニメーションのような作り方――もあると思うのですが、僕はああいう作り方は嫌いです。

結局、合議制で作った面白さというのは、多くの観客を楽しませるかもしれないけれど、どこかで「この監督ちょっとおかしいよね」とか「このシーンどうかしてるよ」と観てる方が思うはみ出した部分が、「映画」の面白さだと僕は思うんですよ。