「映画」には、娯楽だけじゃない“何か”がある
――今回の取材にあたって主要作品を観返したのですが、『百日紅 ~Miss HOKUSAI~』の不完全だからこそ魅力があるということや、『カラフル』での「みんな変なのが普通で当たり前なんだ」ということ、『戦国大合戦』で又兵衛が最期に言ったセリフもそうなのですが、一貫したものを感じました。それを踏まえてひとつの質問をさせて頂きたいと思います。
正直生きづらいこの世の中で、僕なんかも普通の生活に馴染めずアニメや映画にのめり込んで、「この映画が公開されるからもうちょっと頑張ろう」とか、そういう風にしてここまで監督とお会いできるところまで生きてこられました。そういう風に思っている映画ファン、アニメファンはたくさんいると思います。
代表して聞くというわけではないのですが、監督にとって映画を作りながら、アニメを作りながら「生きる」ということはどういうことなのでしょうか?
原:僕も映画で人の命が救えるとは思っていないんですよ。ただ、やっぱり観る前と観た後で、映画は観た人の何かを変えることができると思っています。
僕は、今まで誰も作ったことがないまったく新しい映画を作りたいとは思っていなくて。一番影響を受けた1950年代から60年代の映画監督たち――代表する監督と言えば僕にとっては木下恵介監督なんですけど、僕が好きな映画はそういう人たちが作った映画で。自分もそんな映画を作り続けていきたいですね。
――監督の映画を観た後、僕の中の意識は確実に変わったと思っています。
原:僕自身も20歳前後のときに、いちばん映画を観たんですけれど、そのおかげで今があると思っているんですよ。だから映画に人生を変えられたと僕自身も思っているんです。
やっぱり映画っていうものは、娯楽であるということは間違いないんですけれど、それだけじゃない「何か」がある。作っている人の想いとか、アニメーションで言えば絵を描く人の想いとか、実写でいえば役者さんの想いとかね。そういうものが観れば観るほど、積み重なっていって「自分もああいう風に生きられたらなぁ」と思ったりね。僕なんかは、そんな素晴らしい映画を、自分も作りたいと思うようになったんですよ。
――その言葉に、感動しました。最後に改めて、今回の特集上映や「東京国際映画祭」に来る若い映画ファン、監督ファンに向けてメッセージを頂けますでしょうか。
原:僕は実際の人間としては、何の取柄も無い人間なんです。ただ映画をたくさん観てきたということで、映画監督という偉そうな肩書で呼ばれるようになっていますけど、実はものすごく平凡な人間で、むしろ不器用な人間なんですよ。だから、そういう人でもあきらめずに生きていれば、何かができる。っていうことは言いたいです。そんなとこかなあ(笑)。
――ありがとうございました!
『映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』を観た後は、映画館を出た後に無性に空を見上げたくなる――。『カラフル』を誰かと観に行ったら、その何気ない誰かを大切に思うことができる―。原恵一監督の映画は、観た人の心に何か大事な変化をもたらしてくれるはずです。
ともに30周年を迎えた原監督と東京国際映画祭。映画はこれまでもこれからも、世界中の人々の心に映し出されていきます。ぜひスクリーンで、その感動を体験してみてください。
第30回東京国際映画祭
2017年10月25日(水)~ 11月3日(金・祝)
特集上映「映画監督 原 恵一の世界」
・映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦
TOHOシネマズ 六本木ヒルズ SCREEN3
10月26日(木) 20:15~
・映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲
TOHOシネマズ 六本木ヒルズ SCREEN7
10月27日(金) 11:50~
・河童のクゥと夏休み
TOHOシネマズ 六本木ヒルズ SCREEN2
10月28日(土) 10:15~
・エスパー魔美 星空のダンシングドール
TOHOシネマズ 六本木ヒルズ SCREEN2
10月29日(日) 21:00~
・百日紅~Miss HOKUSAI~
TOHOシネマズ 六本木ヒルズ SCREEN6
10月30日(月) 20:40~
・カラフル
TOHOシネマズ 六本木ヒルズ SCREEN2
10月31日(火) 17:50~
・はじまりのみち
TOHOシネマズ 六本木ヒルズ SCREEN9
11月2日(木) 20:20~
チケットは10月14日(土)昼12:00~インターネット受付にて販売開始!
(スマートフォン/タブレット/PCから購入可能)