中学校時代は、ひたすら地味でした。

――上白石さんは現在は大学生ですけど、中学、高校の多感な時期はどんな学園生活を送っていましたか?

「中学校まで鹿児島にいたんですけど、ひたすら地味でした(笑)」

――何がどう地味なんですか?

「本当に目立たなかった(笑)。勉強は頑張ってましたね。

スポーツも好きで。でも休み時間は仲がいい子とふたりでずっと喋っていたし、男子が苦手で本当に喋らなかった(笑)。

スカート丈も校則に引っかかったことは一度もないし、本当にルールに則って生きていましたね(笑)。

だから、高校生になって東京に出てきたときは、もうカルチャーショックで! 女子が男子の名前を下の名前で呼び捨てるとか、男子に『萌音』って言われるとか、それまではなかったので、何だ、ここは? と思って(笑)。

でも、それにもどんどん慣れていって、中学校のときよりもいろんな人と話すようになったし、行事などでも買い出しや会計をはりきってやるようになりました。

そういう意味では、カナほどではないですけど、中学と高校ではガラッと変わりましたね」

――女優やお芝居の世界に入って、最初に嬉しかったことは?

「オーディションで事務所に入ったのが中学1年生の終わりだったんですけど、『舞妓はレディ』(14)のヒロイン役に選んでいただいたのも、歌ったときとそうじゃないときのギャップがあったからなんですよ(笑)。周防正行監督がそうおっしゃっていて。

あのときほど、田舎で生まれてよかったと思ったことはないし、歌が好きでよかったって思ったこともないですね」

――あれは公開が2年前で、撮影していたのは3年前だと思うんですけど、それからの3年間の環境の変化はものすごいんじゃないですか?

「ものすごいですね。特にここ最近は本当にすごくて、私は心も技術的な面もまったく追いついてない。

周りの環境だけがどんどん変わっていくから、ちょっと怖いなって思うこともあるけれど、でも嬉しいですね。頑張って作ったものが、たくさんの人に届くことほど幸せなことはないですし、逆に身が引き締まります。

このままじゃいけない、もっともっと頑張らなきゃなって思います」

『君の名は。』©2016「君の名は。」製作委員会

『君の名は。』ほどの感情の起伏は初めてだった。

――『君の名は。』のヒロイン声も本当に可愛くて、魅了されました。

「ありがとうございます(笑)」

――相手役の神木隆之介さんも『完璧だ』って言われていましたよ。

「本当ですか~?」

――でも、あの作品も声優へのすごい挑戦だったと思います。

「本当にそうでした。まったく新しい世界に足を踏み入れた感じでしたね。前もアフレコは2、3言は経験したことがあったんですけど、あそこまでの分量と感情の起伏は初めてでした。

でも、神木さんが本当に神様みたいな人で、いつも役に完全に役になりきって横にいてくださったし、引っ張ってくださったから、私も最後まで頑張ることができたんです。

いや~もう、神木さん様様でしたね」

――新海誠監督は厳しい方でした?

「全然! 『怒ることがあるんですか?』って聞きたくなるぐらいに穏やかな方でした。

ダメ出しをするのではなく、『では、こういう感じでもやってもらっていいですか?』とか『こういうニュアンスでもやっていただいていいですか?』っていう、もう本当に丁寧なご指示で、それがとても嬉しかったです」

――今年は『ちはやふる』もありましたし、いい作品に恵まれてますね。

「本当にご縁だな~と思います。

素敵な監督と素敵な共演者のみなさんに恵まれて、どの現場も本当に刺激的でした。

でも、その中でも今回の現場は特に、“お芝居ってこれか!って、身体で感じるような日々でした」

――今回の現場が特にそうだったんですか?

「けっこう4人の芝居が多かったので、空気を作っていくというか、空気の中に飲まれるとはこういうことなんだっていうのをすごく教えてもらいました。

完成した作品を観ても3人が本当に素晴らしくて、私はその中に入ることができて、同じ空気を吸ってお芝居ができて、本当に幸せだったなと思います」

――本当にそれはスクリーンから伝わってきました。

「はい。もう才能の塊のような方ばかりでしたから」

――そのひとりじゃないですか!

「いや~(笑)。でも、そういう方とお芝居をするたびに頑張らなきゃと思うし、どんどん吸収させてもらっていて。まだまだ助けてもらってばかりです」

――いま、仕事は楽しいですか?

「楽しいです!」

――もちろん辛いこともあると思うんですけど…。

「あります(笑)。はい」

――今回のこの現場でも辛いことはありましたか?

「ありましたね。暗い役だったので、心から笑っている時間が演じているときにはなくて。

でも、その分、休憩時間が本当に和気あいあいとしていて、すごく明るかったんですよ。みんなでくだらない話をしたり、歌を歌ったり、美味しいものを食べたり……撮影をしていた和歌山は梅が有名だから、梅のジュースでみんなで乾杯して『染みる~!』って言ったり(笑)。

大変なことが多かった分、みんなと仲よくなれたし、そういう休憩中の雰囲気もすごくよかったので、それは表裏一体というか。

辛い想いをしてよかったなって思えるぐらい素敵でした」