©ジョージ朝倉/講談社 ©2016「溺れるナイフ」製作委員会

10代の破裂しそうな恋を描くジョージ朝倉の伝説のコミックを新鋭の女性監督・山戸結希が映画化した『溺れるナイフ』。

11月5日(土)に公開されるこの注目の青春ラブストーリーで、東京から引っ越してきた人気モデルの夏芽に想いを寄せる高校生の大友を演じたジャニーズWESTの重岡大毅さんにインタビューしました。

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『溺れるナイフ』は東京から田舎町に引っ越してきた人気モデルの夏芽と、彼女が心惹かれる荒々しくも閃光のようなオーラを放つ少年コウ、夏芽に寄り添ううちに彼女に仄かに想いを寄せるようになるコウの中学時代のクラスメイト・大友らを中心に、10代特有のひりひりした恋を描く青春ラブストーリー。

ヒロインの夏芽を小松菜奈が、粗暴な少年・コウを菅田将暉が鮮烈に体現した本作で、圧倒的な包容力と優しさを持つ大友を親しみやすい等身大のキャラクターで演じ、映画を鑑賞した女性たちを夢中にさせているジャニーズWESTの重岡大毅が、貴重な撮影秘話からジャニーズ事務所に入る際の面白エピソードまで素顔全開で語ってくれました。

演じていちばんドキドキしたシーンは、○○シーン。初めてやったし…

©ジョージ朝倉/講談社 ©2016「溺れるナイフ」製作委員会

――重岡さんは大友をどんな青年だと思って演じられましたか?

「すごい奴だなと思いました。夏芽のために身を粉にしているというか、本当にまっしぐらじゃないですか? しかも、頑張ってるぜ~みたいな感じも見せないし。

高校生でそんなの無理ですよ。普通はカッコつけたくなると思うんやけど、大友はそういうのを一切しない。

自分のことは本当に二の次、三の次って感じでいるから、自分では気づいてへんか知らんけど、オマエ、スゴいねんぞっていうイメージが俺の中にはありました」

――原作よりも映画では大友の真っ直ぐさが強調されていて好感が持てました。

「そういうところをわりと抑えようと思っていたんですよ。でも、完成した映画を観たら、夏芽を横にして、ちょっと気持ちよくなっている大友というか、僕がいましたね(笑)」

――いままで出演された映画やドラマと何か違うところはありましたか?

「いままでの中でいちばん自分の素に近い役ではあるのかな。でも、そこを求める山戸結希監督の演出はいままででいちばん難しかったかもしれないです」

――監督からはどんな指示がありました?

「細かい指示が多かったですね。『このセリフのときに夏芽の左腕を見てください』とか『このときにアイスをかじってください』『このときにアイスを下ろしてください』といった動きの指示もあれば、セリフが現場で何回も変わることがあったし、セリフが足されたり引かれたりする中で素に近いお芝居をしなければいけなかったから、すごく難しかった。

本当にそこが軸やったから、僕がちょっとでも力が入ったり、セリフや動きに追われてしまうと、すぐ『カット』がかかって絶対に『OK』をもらえなかった。

そこらへんはすごいシビアやったし、とにかく何かにとらわれたらいけない現場でしたね」

――監督のこだわりがすごいんですね。

「1シーンの中で5つも6つも指示が飛ぶから、ウワ~って頭が混乱して、監督に1回『大友、呼吸~!』って言われましたからね(笑)」

――山戸さんのような若い監督の現場は、ほかの現場とは違いましたか?

「僕はまだそんなにたくさんの映画に出ているわけではないけれど、最初からスゴいな~、こんな現場もあんねんな~とは思っていたんです。

菅田くんとご飯に行ったときに『こういう現場は普通なん?』って聞いたら、『気づいてなかったんか? これ、スゴいぞ!』って言われて(笑)。そのときに“そうなんや!

あんなにいろんな映画に出ている菅田くんも特殊だと感じてんや”って分かって、むしろラッキーに思いました」

――それにしても、和歌山の漁師の息子に完全になっていたから驚きました。

「嬉しいわ。その感想はほんま嬉しい(笑)」

――どうやってアイドルのオーラを消したんですか?

「教えましょか? というか、勝手に消えていた(笑)。思ったよりなかったみたいな(笑)。でも、衣裳さんやメイクさんの力が大きかったかもしれないですね。

眉毛なんてエグいぐらい足したし、髪の毛ものっぺりした感じにして。衣裳もダサいの、ダサいの、いや、もっとダサいのに何回も何回も着替えましたもん」

――少しぐらいのダサさではカッコよさが滲み出ちゃうんですね(笑)。

「かな?(笑) それに僕もけっこう『そのへんにいそうな感じがする』って言われるから、そのイメージがうまく活きたんやないですかね」

――演じていて恥ずかしいって思うことはなかった?

「いや、全然ないっす。普段やれないことをやるのはすごく好きなんで、楽しかったですね。

ダッサ、このTシャツって思いながら演じていました(笑)」

――最初に言われたこと以外で、大友と自分はここが違うなと思うところは?

「僕だったらこんなことはしない、みたいなのは挙げたらけっこうあります。あのカラオケのシーンとか(笑)」

――あんないい奴いないですよね。

「そうですよ。めっちゃ振り回されてるやん! でも、そこは全然飲み込んで、それでも夏芽の力になってあげる、尽くすっていうさ。俺にはあんなカッコ悪いこと全力でできないですものね~。う~ん、あれはスゴいなと思う」

――重岡さんだったら、どうします?

「いや~俺はわりと引いてまうと思うんですよ。そんなに傷ついてないよっていう雰囲気を装いながら(笑)、ほんまに『そっか~、ほな、今日は帰ろか』って言うと思う。でも、あんなことできる奴、なかなかおらんと思うけどな~」

――大友を演じていて、いちばんドキドキしたシーンはどこですか?

「キスシーンかな。キスシーン自体が初めてやったし。だから、ドライ(テスト)のときから実際にするのかな? えっ、どうなんやろう? ドライのときはせえへんのかな? みたいなことも思っていて(笑)。

本番は意外と力を抜いてやれましたけど、あそこはいちばん緊張したし、めちゃくちゃ長丁場で何回も何回もやったからすごく想い出に残っている」

――カラオケのシーンは、完成した映画でもかなり長いシーンでした。

「僕も思いましたよ! カラオケの2番まで行ったで~と思って(笑)。でも、あのシーンも監督の指示がほんまスゴかった。『歌ってる途中に回ったりするのもいいよね。はい、行こう!』とか『もっとワクワクした感じで』とか、監督が現場で思いついたものをポンポン投げてくるような演出だったから、それをうまく受けとめるのが大変で。ほかの現場とは確かに全然違う現場やった」

――監督からポンポン飛んでくる指示にはどう対応しようと思いました?

「俺、そういうのは別にあまり硬くならなくて。

基本的に飛び込んで行こう精神でいるし、現場では自分の感性を信じ、感じたことだけをやろうと思っているんで。だから現場には何も準備をせず、どちらかと言うと、空っぽの状態で行くことが多い。柔軟に動けることがいちばん大事やし、空っぽの方が感じることも多いと思うから。お芝居だけじゃなく、俺はいつもそうですよ。

現場に行けば何かが絶対に生まれるし、準備していっても現場でやりたいことが変わってくるので、お芝居の場合もセリフを入れていくだけやね」

――現場ではどんなスタンスでいることが多いんですか?

©ジョージ朝倉/講談社 ©2016「溺れるナイフ」製作委員会

「目の前にいる相手の役者さんのことを考えているかな。ただ、相手の気持ちを感じたいと思わないようにしていて。欲が出ると力が入ってしまうから、空っぽで行って、ほんまに息をしているだけですね(笑)」

――でも、今回の現場ではそれすら忘れたわけですね(笑)。

「そうそう。『呼吸!』って言われましたもん(笑)」

――監督から「呼吸!」って言われた、いちばん大変だった撮影はどこですか?

「いちばん大変やったのはさっき話したキスシーンやろな。いちばん長回しやった気がするし、セリフの量も指示も多かったんで」

――大友は原作でもすごく人気のあるキャラですし、今回の映画を試写で観た女性の反応も「重岡さんの演じられた大友がいい」という感想が多いみたいなんですけど、大友が愛される理由は何だと思いますか?

「カッコいいからと違いますか」

――いや、重岡さん自身のことじゃなくて(笑)。

「いやいや(笑)。でも、マジで大友ってカッコよくないですか?(笑)

やっていることも可愛らしいし、あの不器用な感じが母性本能をくすぐるんと違います?」

――お話を聞いていてもコミュ力がハンパないなと思いましたけど、現場で共演者の方々とコミュニケーションをとるときに意識していることは?

「コミュニケーションってやっぱり難しいですから、僕もやっては失敗して、やっては失敗して、じゃあ、次はこうしよう! という感じでいままで生きてきたんですけど、今回の現場では、いろいろめっちゃウケたんですよ(笑)。というのも、ピリピリするヘヴィなシーンが多かったから。

俺が『おはようございま~す』って現場に入っていくと、スタッフさんがぐったりしていて、それこそ夏芽役の小松ちゃんなんて、ほんま死んだ魚のような目をして座っていることもあったんです。

でも、俺がらみのところはバッティングセンターで夏芽と話したり、チャリンコで魚を届ける和むシーンがほとんどだったんで、その現場の空気にも助けられて、俺の言うことがけっこうウケるから、楽しかったですね(笑)」