――それで調子に乗ったんですね(笑)。

©ジョージ朝倉/講談社 ©2016「溺れるナイフ」製作委員会

「そうそう(笑)。それに今回の映画は和歌山で撮ったんですけど、俺の撮影は毎日じゃなく、1日や2日連続のオフがあったから、ひとりで部屋でボ~っとしていることも多くて。

トンネルを2つ通らないとコンビニもないし、喋りたくても喋られへんみたいな感じで、人に飢えていて、現場に行ったらめっちゃ喋ってた(笑)。

それに、現場も“急にうるさい奴が来たな!”って感じのテンションで自然に受け入れてくれて、ちょうどそこにハマったのかな。だから、笑わせていたというより、笑われていたのかもしれないですね(笑)」

演じながら、女性の心理や行動は分からへんことばっかりやと思ってました(笑)

©ジョージ朝倉/講談社 ©2016「溺れるナイフ」製作委員会

――もともと人を笑わせるのは好きなんですか?

「好きですね。そこは関西人の血ですかね。やっぱりウケたいっすもん。キャーキャー言われるより、そっちの方が全然嬉しい(笑)」

――そういったコミュ力も関係していると思うんですけど、コウと夏芽の距離感とは対照的に、大友と夏芽の距離感はすごく近くて、それが自然です。あの距離感はどうやって作っていったんですか?

「どう作っていったやろな~? でも俺、現場で小松ちゃんとおるときは全然硬くならなかったんですよ。

この現場で初めて会ったのに、すごい喋りやすいな~と思っていたんやけど、取材で小松ちゃんが『初めて会った感じがしなかった』って言うてるのを聞いて、それや! と思って。

彼女もそう思ってくれていたから、あんなに喋りやすかったのかもれないし、それが土台としてあったので、俺もそんなに硬くならず、友だちのようなナチュラルな距離感が作れたんやないかな」

――演じながら、女性の心理や行動で分からないな~と思うところはなかったですか?

「分からへんことばっかりやと思ってました(笑)。特に上白石さんが演じた(大友のクラスメイトの松永)カナちゃんの、笑ってるけど、ほんまは笑ってないあの表情はほんま怖っ!と思った。

この笑顔の裏には何かあるって感じが伝わってきたし、女の人のめちゃめちゃ怖いところを見た感じがしましたね」

――夏芽の心の動きに関してはどうでした?

「夏芽はずっとコウを追いかけていたけど、なんで好きなんやろな~と思ってました(笑)。バーンって押されて、キスされるみたいなのとかさ~ドS、ドS。めちゃくちゃやん、みたいな。ああいうのが好きなんや~と思って(笑)。強烈なんやろな。

神々しいオーラみたいなものが出てたから、そういうところに惹かれているのかな? と思ったけど、ほんま分からへんかったわ」

――完成した映画を観て、ご自身が演じた大友はいかがでしたか?

「う~ん、いい悪いではなくて、あっ、このシーンってこうなったんや~とか、そういう答え合わせ的な感じで観ていたかもしれないな~。ただ、カラオケのインパクトが凄すぎて。

あれ、自分がやっているって考えて?(笑)メンバーの藤井流星と一緒に試写を観たんですけど、流星も横で『ウワ~』って言ってるから、俺もめちゃめちゃ恥ずかしかったんですよ(笑)」

――藤井さんが自分から「観たい」って言われたんですか?

「試写会に行く話をしているときに、流星が『あっ、俺も行きたいねんな~』ってボソッと言うてたのは聞いてたんですけど、当日行ってみたら流星がいたから、ほんまに来たんや~と思って(笑)。でも、ちょっと嬉しかったですけどね」

――感想は聞きました?

「試写が終わってからふたりでカフェに行って、『よかったよ~』みたいな話はしてもらいましたけど、そこでも『カラオケが』『カラオケが』ってめっちゃ言うから、『ちょっとやめてくれよ~』って頼みました(笑)」

――タイトルにちなんでお聞きしますが、いままでに何かに溺れたことはありますか?

「あ~ほんまに俺、すっごい汗かきなんですよ。だから、ステージがビッチャビチャになって溺れるときがあります(笑)。言うたら、溺れさすみたいな感じです。

ピンマイクの電波を飛ばす腰につける機械を、汗で潰してますから。ほんまに。いや、これは溺れさせた話やな(笑)。じゃなくて、何かに没頭したみたいなことですよね?」

――そうです、そうです。

「いや~勝手に脱線して、勝手に本線に戻ってすみません(笑)。でも、なんやろ?何に溺れたことあるやろ? 没頭やろ? あ~でも、それはいまの仕事ちゃいますかね。

初めてステージに立ったときに、遊園地に行ったときのようなワクワクする感覚になったことを未だに覚えてますもん」

――初めて立ったときにもうワクワクしたんですか?

「しました、しました。なんでこんなにいっぱいの人が見てんの? みたいな。後ろの方で踊っているんですけど、何してるの、俺? みたいな。だって、ほんま、昨日一昨日までは普通の子やったんで。

まあ、ジャニーズならではだと思いますけど、あんまり練習もしていないのに『はい、ステージ!』ってパッと急に上げられることが何回もあったんで。

そこからもう没頭でしたね。最初は部活の延長線みたいな感じやったけど、生活の中心に一気になりましたし、やっぱり絶対にデビューしてやる! みたいな気持ちになりましたもんね」

14歳の冬、経験したことのない世界が一気にウワ~って押し寄せてきた

――ちなみに、ジャニーズ事務所には自分の意志で入ったんですか?

©ジョージ朝倉/講談社 ©2016「溺れるナイフ」製作委員会

「俺は友だちと一緒に履歴書を送りましたね。その友だちが『ひとりで履歴書を送るのはイヤやから一緒に送ろうよ』って誘ってきたから『え~』って言いながら送ったんやけど、内心“俺、イケるんちゃう”みたいなのがあって(笑)。

ジャニーズに入ったのは中学のときなんですけど、あの年代って周りの目をいちばん気にするじゃないですか? だから、『俺、ジャニーズ事務所に入りたいねん!』ってなかなか言えなくて。

『オマエ、自分のことをイケメンだと思ってるの?』

って絶対に言われますから、友だちが誘ってくれたのはいいきっかけでした(笑)」

――中学何年生だったんですか?

「中二ですね。それで友だちの女の子が履歴書をバ~っと書いて、あとはポストに入れるだけのものを作ってくれたんですけど、俺、一緒に同封する友だちと一緒に撮った写真をあんまり気に入ってなくて。

でも、『気に入ってない』なんて言えないから『俺、こんなんでええで』みたいなことを言うてたんですけど、そのポストに投函するだけのものを家で綺麗に開けて、そこに駅前の機械でひとりで撮った証明写真を入れ直しましたね(笑)」

――芸能界に興味があったんですか?

「いや、全然なかったんですけど、いきがっていたんでしょうね。だから、一次審査の合格通知はFAXで来るんですけど、それだけで満足やったんです。オカンもFAXが届いて初めて履歴書を送ったことを知ったんやけど、『俺、行かへんからええ』って言ってて。

俺はその合格通知のFAXが届いただけで嬉しかったし、実際、それを綺麗にファイリングして、学校に持って行くことしか考えていなかったんです。

でも周りに『行け、行け』って言われて、二次審査にも行ったら、受かっちゃった(笑)」

――それで先ほど言われたように、初めてのステージでワクワクしちゃったんですね。

「そうです。14歳の冬ですかね。初めて出たのが、関ジャニ∞の安田(章大)くんのバックやったんですよ。そしたらほんまに、経験したことのない世界が一気にウワ~って押し寄せてきて。それでやってみようって感じでした」

――最初にステージに立ったときに何にワクワクしたんですか?

「いろんなことですね。それまでは鬼ごっこばっかりしていて、ダンスを踊ったことも歌うこともなかったし、触れることもなかったから、もう全部です。

ステージに上がることもあまりないし、中学のときに歳の離れた人と接することもないと思うけれど、いちばん上はジャニーさんで、下には小学生の子とかもいましたからね(笑)。

でも、ダンスも歌もできて、お喋りも上手な人たちがいっぱいいる、何、この世界? というところにいきなり飛び込んだので、波がうわ~って来て、その揉まれている感じが楽しかったんだと思います。

で逆に、それまでは大人からめっちゃ怒られることなんてなかったけれど、俺、不器用やったからめちゃめちゃ怒られました」