『ファンタビ』を通じて共有したい、2つのメッセージ
Q:先ほど「主人公が子どもたちではなく大人である」という話が出ましたが、20代~30代の大人になった世代がかつて、ワクワクしながら『ハリポタ』シリーズを見るために、映画館に足を運んだのと同じように、いまの子どもたちも『ファンタビ』シリーズを楽しめますか?
また、親子で一緒に楽しんだり、考えたりできるポイントがあれば教えてください。
そうですね、この映画を通じて、みなさんと共有したいメッセージや価値観がいくつかあります。
まず「他者に対する寛容さや興味を持つ」ということです。
たとえ、自分と外見が違ったり、少しばかり奇妙に見えたとしても、他者を恐れるのではなく、違いを受け入れるということが大事なんです。
映画では分断された2つの世界――魔法を使える者たちのコミュニティと使えない者たちのコミュニティが描かれます。
この2つの世界を分断するのではなく互いを理解し、壁を作るのではなく関心や好奇心を持つことが必要なんです。
そして、もうひとつは「自分が自分らしくいることを認める」ということです。
映画に登場する青年・クリーデンス(エズラ・ミラー)は、母親に抑圧され、魔法を使うことが許されません。
自分本来の姿を認められず、自分を表現できずに心の中に葛藤、痛みを感じています。
本来の自分を理解し、認めること、そして他者に手を差し伸べること…と言うと少し、理想論であり過ぎるかもしれませんね…(苦笑)。
ではもうひとつ、よりシンプルに、子どもたちに伝えたいメッセージを(笑)。
主人公のニュート・スキャマンダーは魔法動物学者で、現代で言うところの「環境保護」を積極的に行っています。
絶滅の危機にある動物たちを彼は保護しているんです。
子どもたちがニュートを見て、自分たちが美しい自然を持った地球にいること、そこでは毎年のように絶滅の危機に瀕している種が数多くいるということ。
ニュートのように自然を守ることが大事だということを感じてもらえたら嬉しいですね。
ただし、子どもというのは本当に素晴らしいもので、こちらがなにも言わなくとも、それぞれに作品を見て、自然に何かを受け取ってくれるものです。
この作品もそうあってほしいですね。
『ファンタビ』シリーズはまだまだ続く…
Q:シリーズは5部作ということで、今回は1926年のニューヨークを舞台にしていましたが、今後、ニュートはどのような旅をすることになるのでしょうか?
まさにいま、J・K・ローリングが必死にアイディアを練っているところだと思います(笑)。
このシリーズの素晴らしいところは、映画館に行って見るまで、どのような物語になっているのかがわからないというところです。
『ハリー・ポッター』シリーズでは、原作が刊行されており、人によっては3回も原作を読んだ後で、展開を分かった上で映画館に足を運ぶ人たちも多くいました。
原作から泣く泣くカットしなければならなかったシーンについて「なんであのシーンがないんだ!」と残念に思われることもありました(苦笑)。
ですが、このシリーズに関しては、全てはこれからJ・K・ローリングが生み出すわけで、ワクワクしながら劇場に来てもらえます。
だから、私もみなさんの鑑賞体験を素晴らしいものにするため、極力、事前に情報を伝えないように自分を律しているんですが…(笑)。
ただ、少しだけ言いますと、このシリーズはだいたい20年ほどの時間を描く予定で、第2次世界大戦が終わる1945年ごろまでが描かれることになります。
そして、次の第2作は1928年ごろのパリで展開することになるんじゃないかと思いますが…(笑)。
Q:今回、移民たちと一緒にイギリスから新天地アメリカにやって来たニュートの姿や、禁酒法時代のアメリカ社会が描かれていました。『ハリポタ』と世界を共有しつつも、人間の世界、しかも過去を舞台にしているからこそ、物語と一緒に、歴史を学ぶこともできますね。