バラエティ番組で活躍する構成作家さんが世に送り出した『おそ松さん』

昨年、女性のアニメファンを中心に人気が爆発し、「社会現象」と呼べる程の大ヒットを記録した『おそ松さん』も、その脚本にお笑いやバラエティ番組といった文化圏を中心に活躍するクリエイターが参加したアニメ作品です。

本作でシリーズ構成を務めた松原秀さんは、かつて一世を風靡したネタ番組である『エンタの神様』にも参加をしていた構成作家さん。更に、アマチュア時代はラジオ番組『ナインティナインのオールナイトニッポン』で有名ハガキ職人として活躍した経験を持ち、「吉本総合芸能学院」(NSC)への入学を経て構成作家の道に入ったという経歴をお持ちです。

クリエイターとしての出発点から現在に至るまで、まさに「お笑い」を軸に活動されてきた作家さんなわけですね。

松原さんは、お笑い関係の仕事に加えて、『銀魂』など幾つかの作品でアニメ脚本家としての活動も開始。『おそ松さん』では、シリーズ構成、メインライターとして作品に参加し、故・赤塚不二夫先生の代表作の一つである『おそ松くん』を現代的にリメイクしてみせました。

作品内では、お笑いユニット「夜ふかしの会」の作家を担当している岡田幸生さんが脚本家の一人としてシナリオを担当するなど、松原さんの構成作家としてのセンスが光る人選も行われています。

そう考えてみると、例えば第20話の『イヤミの学校』(お笑いの専門学校を開校したイヤミが、プロの芸人を目指すおそ松さんたち6つ子に笑いの真髄を説き、芸を舐めている彼らを次々に論破するというエピソード)で描かれたお笑い論にも、より一層の説得力が感じられます。

ベタ、シュール、ブラック、シモ&エロ、そして時には人情噺……ありとあらゆる笑いのスタイルが散りばめられた『おそ松さん』のコメディ世界をお笑いやバラエティ番組をメインに手掛けるクリエイターさんが作っていたというのは、如何にもおもしろいトピックです。

また、2010年代のアニメにおいて、特に女性から強い支持を受けている『TIGER & BUNNY』と『おそ松さん』という2作品が、どちらも「アニメ専門ではない脚本家さん」「お笑いやバラエティ出身の作家さん」が生み出したという点も非常に興味深いポイントですよね。

数々の異色ショートアニメを手掛ける、あの人気アニメ監督もお笑い芸人出身!

『gdgd妖精s』『てさぐれ! 部活もの』『魔法少女? なりあ☆がーるず』などなど、超個性派のショートCGアニメを次々に世に送り出している石ダテコー太郎(石舘光太郎)監督も、アニメ監督になる以前にお笑い芸人として活動し、構成作家への転身後にバラエティ番組を手掛けてきたという経験を持つクリエイターです。

ナンセンスなストーリーとシュールなギャグや、「MikuMikuDance」を用いた3DCGによる特徴的なキャラクター造型、そして、「プレスコ収録」という形式を活用した女性声優さんのフリーダムなアドリブ演技などなど、斬新かつ実験的な手法を盛り込んだ作風で、アニメ業界において非常に個性的なポジションを確立している石ダテ監督作ですが、そのバックボーンにあるのが「お笑い」であるというポイントにも、注目すべきかと思います。

例えば、代表作の『gdgd妖精s』や、最新作である『魔法少女? なりあ☆がーるず』といった作品で観ることができるアドリブ進行による台詞のやり取りは、ラジオやトークバラエティ的な構成によって形作られていますし、こういった思い切った手法を取ることができる大胆さと自由闊達な発想力、表現力の背景には、元お笑い芸人ならではの感性がストレートに活かされているように思います。

石ダテコー太郎監督には、これからも、その自由なアイデアを武器に前人未到なショートアニメを作り続けていただきたいですよね。