「コーチング」といえば、一般的に、企業や組織が、人材開発やリーダー育成などのためにコーチを導入して人を育てる手法のこと。そのコーチングを子育てシーンで実践する「子育てコーチング」というものを、よく耳にするようになりました。

そのコーチングの中で欠かせないといわれる「傾聴」は、子育てコーチングにおいても重要視されています。

子育て中のママは、この「傾聴」を実践することで、子どもとの対話に、新しい可能性が見出せるかもしれません。

そこで今回は、子育てコーチングの第一人者である、子育てコーチの石谷二美枝さんに、ママが子どもに対して「傾聴」を行う方法と、傾聴力を鍛える方法を教えていただきました。

コーチングの「傾聴」は子育てにどう役立つ?

コーチングにおける「傾聴」とは、深いレベルで相手を理解し、相手の気持ちを汲み取り、共感しながら「聴く」方法のこと。石谷さんに、「傾聴」が子育てにどう役立つのか教えていただきました。

石谷二美枝さん(以下、石谷)「あなたは、子どもが話しかけてきたときに、どのように聞いていますか?

毎日忙しくしているお母さんにとって、子どもの話を『ちゃんと聴く(傾聴)』のは簡単なことではないでしょう。実際は『ちゃんと聴いている』ようで聞いていないというお母さんはとっても多いです。

しかし『ちゃんと聴く』と子どもの育ちにとって、いいことがたくさんあります」

1.親子の信頼関係を築ける

石谷「子どもの話を『ちゃんと聴く』ようにすると、親子の信頼関係が築けます。

自分の話を否定されず聞いてもらうことで、子どもは『自分は受け入れられている』『自分は大切にされている』という自己肯定感が高まります。また、親への信頼感も高まります」

2.相手に伝わる話し方ができるようになる・語彙力がアップする

石谷「話を『ちゃんと聴いてもらう』ということで、子どもはどのように話すと相手に伝わるのか考えるようになるほか、自分の言葉で言いたいことを伝えるために語彙力も増えることが期待できます」

3.他者とのコミュニケーションが円滑になる

石谷「『ちゃんと聴いてもらう』経験が多い子のほうが、自分も『ちゃんと聴く』子になります。

学校などで他者とのコミュニケーションも円滑になり、主体的にかかわれるようになります」

子どもに対する「傾聴」の実践方法

親子にとってメリットの多い「傾聴」。今すぐにでも実践したくなったママは多いのでは? 早速その実践方法を教えていただきましょう!

石谷「『傾聴』は、子育てコーチングのすべての土台となるものです。『傾聴』の【聴】という文字は、『耳と目と心』という文字が隠れています。子どもの話を『全身で聴く』という意味です。

例えば、子どもに話しかけられたら、作業している手を止めて、子どものほうを見ましょう。

『エンジェルアイ』といわれる優しい眼差しで話を聞きましょう。視線だけを子どもに向けるのではなく、『おへそを向ける』ように体全体を子どもに向けましょう。

子どもの話は、最後までさえぎらずに聴きましょう。

『自分が聞きたいことを聞く』のではなくて、『子どもが言いたいことを聴く』ようにします。自分の物差しはいったん横に置き、ジャッジせずに聴きましょう。

話の言葉だけではなく、言葉にならない心の中の言葉も感じてあげられるといいですね。

話の内容の事柄も大事ですが、子どもが口にした感情の言葉に注目して聴くのがポイントです。『…が楽しかったんだね』『…は辛かったんだね』という感じです」