――千羽さんの参加にはそういった経緯があったんですね。

千明:口添えを頂いて、千羽さんが受けて頂いた時点で『ブレイブ ストーリー』っていうのは、大変だけどやれるだろうなと思いましたね。実際にそうなったと思います。

――作品として一本軸が通っていて。ラストカットもすごくいいんですよね。最後、表情を見せないというところが凄く好きです。

千明:あれは安彦さんにも褒めて頂きました(笑)

――あれは監督の決めカットで?

千明:そうですね。原画は大橋さんで、原画上ではミツルの表情まで描いてあったんですよ。

テスト撮影では、表情も入ったカットがあったんですが、DVDが出るときにそれを探してオマケでつけようかなと思ったらすでに消されていて……すごく残念でした(笑)

――作画して撮影か編集段階で調整したということですか?

千明:いや、最初からコンテでも切ると決めていました。大橋さんが一応全部描いてくださって(笑)

――どういう表情をしていたのかは、想像に任せた方がいいですね! あのラストにたどり着くためのお話だったなと思います。物語を演出するうえで、千明監督の親心的な目線はあったりしましたか?

千明:千羽さんと隣の席でよく話していたんですけど、千羽さんは絵だけじゃなくて、お話とか台詞とかも踏まえて、考えて絵を描く方なんですね。

たぶんそれが画面に出る方なんですけど、千羽さんが当時「小学生って思ったよりも大人だよね」って言っていたんですよ。

コンテを切っているとき、ときどき迷ってしまって止まることがあったんですよ。そういうときにしゃべっていたら、隣の席で絵を描きながら「自分たちの小学生のときのことを思い出してみたらいいですよ」って言われて。

「今もそうだし、自分たちのときもそうだったけど小学生って子どもじゃなくて、大人が決めつけているよりもいろんなことを考えてるよ」って話してくれて。

「そうだよね!」って、たしかに小学生の子どもたちなんだけれど、ミツルにしてもワタルにしても本当に家族のこととか考えているじゃないですか。頑張って一生懸命まわりの人たちのことを考えて、みんながいい方向にいくように行動する子どもたちの話だってことに改めて気付かされました。

気持ち的にスッと抜けたんですよ。そこからは全然悩むこともなくて。

――それからコンテも進んだんですね。

千明:進みました。といっても前田さんや大橋さんにコンテを手伝って頂きましたけど(笑)

――GONZO作品らしくないのも、ある意味GONZO作品みたいなところがあって、1つの集大成かなと思います。