緊急事態宣言が全国的に解除されましたが、保育園や小学校などは段階的に再開されるため、まだまだ在宅で子どもと向き合う時間は続いているかもしれません。
子どもと一緒に家で過ごすなか、親はテレワークなどで仕事をする必要もあります。けれど、「家で子どもと一緒にいると仕事にならない」といった親の声も聞こえてきます。
仕事に集中するときは、罪悪感を抱きながらも、ついスマホやタブレットで動画を見せている人も多いのでは。このようなとき、どのように子どもと接するのが良いのでしょうか。
発達心理学専門の法政大学文学部心理学科教授の渡辺弥生先生に、未就学児とのテレワーク時における接し方や、見せるのに推奨する動画、親が子どもの成長のために注意したいことアドバイスいただきました。
「テレワーク×おうち子育て」中に親が持ちたいベースの心
渡辺先生は、まず具体的な子どもとの接し方の前に、根本的に発想を転換することが重要だといいます。
短い時間でも子どもとしっかり向き合って
渡辺弥生先生(以下、渡辺)「仕事の合間に相手をするよりも、子どもの言ったことに対してしっかり応答しましょう。例えば、朝は子どもとおもいっきり遊ぶなど、短い時間でも子どもとしっかり向かい合う時間を作ることが大切です」
「人間を育てることに向き合える素晴らしい機会」ととらえて
渡辺「親はつい、『子どもが仕事の邪魔をしてくる』ととらえがちですが、発想を転換してほしいです。
子どもと向き合うこと、子どもを育てることは、1人の人間として成長させること。本来、人間を育てるというもっとも素晴らしいことに向き合えることなんだ、親としての役割を果たせるんだという気持ちをベースに持ってください。
私が発達心理学をやっていて得したなと感じることは、わが子が2歳でイメージができるようになり、3歳で好奇心が湧くようになるなど、こんなに小さいのに、もうこんなことができるのかと逐一、感動できることです。
子どもはどんどん賢くなって、すごいなと思わせる存在。もうちょっとここを伸ばしてあげよう、と思えたらいいですね。もう、すでに子どものすごさを知る機会を見逃したかもしれないですよ」
子どもと遊ぶスケジュールを「見える化」しよう
子どもとしっかりと向き合う時間を作るためにも、一日のスケジュールを大ざっぱでも「見える化」しておくといいそうです。
渡辺「家では自由にスケジュールが組めるメリットがあります。子どもと向き合う時間も、朝昼晩リズムよくやるのが1番。ルーティン化していると、次にどうしようかというストレスがなくなります。
例えば、午前中と午後のこの時間を『ママと遊ぶ時間』にしようね、とポスターを貼り出して、子どもにもわかるように見える化しましょう。そうすると、だんだん子どもも『この時間になればママと遊べるんだ』と分かってきて、新しい生活習慣を学んでいきます」
どんな遊び方がおすすめ?
子どもと一緒に遊ぶときには、具体的にはどんな遊びや向き合い方がおすすめでしょうか。
渡辺「子どもは遊びながら人間として生きるためのことを日々学んでいきます。子どもは遊びを通してたくさんのことを学んでいます。
考える力、やり抜く力、モノやコトの成り立ち、人との関わり方、適度な挫折に、達成感など。例えば、身体を動かして、筋肉や感覚機能を発達させています。運動をしなければ筋肉が弱るのと同じように、偏った遊びだと、全部の筋肉や感覚機能を使っていないとなってしまいます。
YouTubeの動画を見たときには、イメージ遊びをしたり、ヒーローの真似をしたり、想像力を育てています。子どもが記憶して行動で再現したりして運動感覚やワクワク感など感情力も育てています。
積み木や粘土はクリエイティブな能力を育てています。社会生活のやりとりを学ぶごっこ遊びなど、バランスの良い遊びは、子どもの人間力を育てているといっても過言ではありません。もうちょっと発想を広くして、いろんな遊びをさせてください。
言うまでもありませんが、親が子どもに関心を向けているそのこと自体が、子どもは『自分はここに存在していいんだ!』という自己肯定感を育てることにつながっています。親がスマホ見ながら、横目でチラチラ遊んでいるのを見るだけというのは、子ども心に悲しいものです」