醤油で煮込んだ豚肉のこま切れをごはんにのせた魯肉飯(ルーロウファン)は日本にもじわじわ進出しつつあり、一時は立ち食いそばチェーンのメニューに登場するなど、台湾通はもちろん、あまり台湾のことを知らない人にも知られるようになってきた。
しかし、魯肉飯だけでなく、台湾には魅力的な肉丼はまだまだある。魯肉飯が北の横綱なら、南の横綱は「雞肉飯(ジーロウファン)」。今回の台湾肉丼特集は、鶏肉やその他の材料を使ったものを集めてみた。
そもそも雞肉飯とは何か? 魯肉飯が醤油煮込み豚そぼろ丼ならば、雞肉飯はほぐし鶏モモ肉丼といったところ。ピンク色の柔らかい鶏モモ肉を塩味で煮込み、これを細くほぐして白米にのせたものだ。
見た目は白っぽいので薄味に見えるが、もちろん鶏のダシがきいていて、ほどよく塩味も付いているのでごはんが進む。魯肉飯よりもクセがなくさっぱりしているので、いくらでも食べられる。
筆者が台湾に渡ったばかりの90年代半ば、言葉ができずに魯肉飯ばかり食べたていて少々うんざりていたとき雞肉飯に出合い、「こんなに美味しいごはんがあったなんて!」と衝撃を受けたほどだ。
嘉義名物の鶏丼が台北で食べられる
台北駅の北側にあるの寧夏夜市に、オーソドックスな雞肉飯を食べられる食堂「蔡家嘉義火雞肉飯」がある。日本人に人気の寧夏夜市内にあり、清潔感のある店構えなので初心者でも入りやすい。
塩加減がちょうどよく、肉はやわらかいながらも適度な歯ごたえがあり、ジューシーな鶏肉の旨味が伝わってくる。食べるときは上から食べるのではなく、お椀の底にたまった肉汁とごはんをしっかり混ぜるのがポイント。
蔡家嘉義火雞肉飯(ツァイジャージャーイーホォジーロウファン)
台北市寧夏路48號 TEL:02-25554875
11:00~25:30 隔週木曜休
本場嘉義の鶏丼 その1
雞肉飯の発祥地・嘉義は、台中と台南の間に位置する、今もっとも注目すべき地方都市だ。嘉義は実は食都台南と並ぶグルメ都市で、隠れた名品も多い。
地元の人たちは観光客ずれしていなくて人当たりがよく、街や人が全体的に“ゆるい”感じなのも旅行者にはありがたい。
名物の雞肉飯は、嘉義市内に無数に存在する。台南人にそれぞれ行きつけの虱目魚(サバヒー)店があるように、嘉義人にも自分がひいきにする雞肉飯の店がある。
そんな雞肉飯激戦区でもトップを争うのが「劉里長雞肉飯」だ。台湾で歴代興行収入ナンバーワンを記録した大ヒット映画KANOは嘉義が舞台だが、そのロケ弁にも使われたというお墨付き。
嘉義では朝食に雞肉飯を食べる人も少なくない。この店は朝食にも合いそうなあっさり系だが、塩味のバランスがよく、なにより鶏肉が驚くほどやわらかくてジューシーだ。
この店のもうひとつのウリは、下水湯と呼ばれる鶏モツスープ。さまざまな部位が入っていて食感が楽しく、臭みもないので初心者でも安心して食べられる。
劉里長雞肉飯(リョウリージャンジーロウファン)
嘉義市公明路197號 TEL:05-2227669
5:30~14:30 隔週月曜休