1歳頃になると、上下4本ずつ前歯が揃います。前歯の本数によって、かじりとれるかどうかに違いが出ますから、前歯が揃えば自分でかじりとることができるし、生え揃っていない子は焦らずにゆっくり進めていきましょう。

指先と前歯は食べ物の固さを感じるセンサーです。これは硬いとか軟らかいとか、指先で感じ、歯でも感じる。それを自分なりに感じとっていくことが重要です。

10カ月の子がモリモリ手づかみ。一方でうちの子は何も食べたがらない、触らない……。そんな子を持つお母さんほど悩みが多いのですが、別に焦ることはありません。個人差があるので、1歳すぎからでも遅くはありません。

手づかみ食べの始まり頃は、手づかみできるものをたくさん用意する必要はありません。1品あれば十分です。たくさん用意しても、結局はポイポイして遊び食べになるだけですね(笑)。

遊び食べには、過剰に反応すると面白がってしまうので、落ち着いて『やめようね』『いやだな、困るな』と大人が困ることを伝えます。良い食行動には、何度でも褒めると遊ぶことも減っていきます。スプーンやフォークを持ちたがりますが、よく落とすので数本用意すると大人のイライラ感が軽減できます。

『なんだろう』と目で確かめ、ちょっと握って、かじりとって食べる。その繰り返しから自分の一口量を自分で覚えていくようになります。また、手指と口の動きの協調運動を学び、次にスプーンなどの食具を、大人の食べ方を見て真似ていきます。

それまでは、汚れてもいいようにエプロンをつけたり、テーブルの下にシートを敷いて後片付けがしやすいように準備しましょう」

道具の使い方より「自分で食べている」ことを褒めて意欲を引き出す

太田「自分で意欲をもって食べられるのは、赤ちゃんがグーで握ったときに先っぽが出ているもの。グ―で握ったときに、手の中に入り込んでしまう小さいものだと食べにくく、嫌がる原因になったりします。

また、1歳代はまだ脇が開いていないので、食べ物を握ったときに、小さいものだとうまく口に入れられません。スティック状で少し長さがあるもの、ある程度軟らかいもの、触ってベタベタしないものがいいでしょう。

2歳頃になると脇が開いて、前から食べ物をとらえられるようになるので、こぼさなくなります。大人が箸を使っていると、スプーン・フォークなどの道具にも興味を持って使いたがるようになります。

2歳頃までは食べ方は汚いです(笑)。こぼすことは当たり前と思ってやらないとイライラしてしまいます。大事な通過点として、そういうものだと、知っておく必要があると思いますね。

また、3歳頃までは手づかみすることがあります。スプーンやフォークを持って食べることがほとんどですが、手づかみがしやすければ手づかみで食べます。大人になって手づかみだけなんてことはないので問題はありません。

どんな方法であれ、持ち方であれ、『自分で食べてえらいね。できたね』と周りの人が褒めてあげると、食べる意欲が引き出されます。子どもには楽しい言葉かけや食べる様子を見せて食卓にいることを楽しめるようにしていきましょう」

「いわしと豆腐と3種野菜のスティック」160g・8個入り:298円(税抜) 化学調味料・塩分無添加、電子レンジで温めるだけで完成。 カミカミできるようになれば9カ月頃から食べられる。 (オイシックス株式会社より発売)

最近では、赤ちゃんが手づかみで食べやすい便利な商品も登場しています。上手に利用したいですね。

ライター/女子栄養大学 食生活指導士1級。学生時代からさまざまな体調不良に悩まされたこともあり、健康的な生活習慣について学び始める。現在は専門家を中心に取材活動を行い、おもに食、健康、美容、子育てをテーマにした記事を発信。乗りもの好きな1男の母でもある。