「離乳食に何を食べさせるか」には気を配っていても、それをどのように食べさせればよいかという「食べ方」について、これまであまり話題になることはなかったように思います。

そんな中、ひそかに注目を集めているのが「手づかみ食べ」。

「道具が上手に使えないうちは、手づかみもOK」……という消極的な容認ではありません。

むしろ、手づかみ主体でガシガシ食べてもらう。それを積極的に親がサポートする。

そうすることで、子どもの意欲や自立心をはぐくむことができるというのです。

手を使って食べることで脳を刺激。感覚・運動機能を高める

母親としては、子どもになるべく早く、スプーンやお箸などの「道具」を使って「上手に」食べられるようになってほしいと思いますよね。

けれども、早いうちから道具を使ったトレーニングをすることが、必ずしもよいとはいえない部分があるようです。

新書『子どもの「手づかみ食べ」はなぜ良いのか?』によると、2歳頃の早いうちから箸が上手に使えるような子は、どういうわけか小食だったり、偏食だったりすることが多いそう。

どこかに何らかの無理が生じているのかもしれません。

赤ちゃんは生後5カ月頃から、手で触れたものを何でも口に持っていき、なめたりしゃぶったりして五感を働かせながら、外の世界を認識していきます。

そして目で見て、手で触わり、口に入れながら、温度や形、やわらかさ、質感など、さまざまな情報をインプットしていきます。

食べものに触り、つかみ、口に運ぶという一連の動作は、慣れない赤ちゃんにとっては非常に難しいもの。

試行錯誤の中で動作を繰り返して感覚機能や運動機能の協調性、認知力などを高め、力のコントロールや、食べるのにちょうどいい分量、食べものと自分との距離感覚などを1つ1つ学んでいきます。

そしてやがて、スムーズな動きができるようになります。

「手づかみ食べ」は、傍から見ると、どうしても粗暴な姿に見えてしまうのが難点。

でも、離乳後期から手づかみ食べを十分に経験させてあげることが、のちにスプーンや箸を使って上手に食べられるようになるための基礎をつくるといいます。

子どもの運動能力や「噛む力」を育てるためには、立って歩き出すまでの十分な「ハイハイ」の経験が必要だと言われています。

それと同様に「手づかみ食べ」も、一見遠回りに見えながら、実は子どもの自然な発達に沿った、次の段階に進むための重要なステップと考えられます。

また、皮膚は「むき出しの脳」と呼ばれるほど、皮膚と脳には密接な関係があります。いろいろなものにじかに触れ、手を動かしながら食べることが、直接脳を刺激し、活性化します。

お年寄りの認知症予防のために、手先を積極的に動かすことが推奨されますよね。手指を使うことは、そのものの機能を発達させるだけでなく、大脳の発達にも好ましい影響を与えてくれるのです。