《増殖する無量の生命 - A Whole Year per Year》 ©️チームラボ

「境界」のない世界を体感してもらいたい

── 国境や県境、家と外だけだけでなく、夜と昼など確かに、見えない境界線を突然意識する事象が増えてきています。

猪子 人類はこれまでも多くの問題に直面してきた。でもその分断を明確にすることで解決した例は一度もないと思っています。

現在、お台場の常設ミュージアム「チームラボボーダレス」、豊洲に「チームラボプラネッツ」がありますが、どちらも境界のない世界を体感できるものです。チームラボボーダレスは世界そのものが連続しあっていることが美しいということ、チームラボプラネッツは世界と自分が連続しているということを体験してもらいたいと考えている。作品のなかで水や光のなかに入っていくのもそれが理由です。

にもかかわらず、時代は逆行していてる。コロナのために、人と人とのあいだに境界が生まれ、さらなる分断が生じている。そこで、いま問題になっている境界を、アートの力で解消していきたいと考えています。

お台場の「チームラボボーダレス」では2020年夏から《増殖する無量の生命 - A Whole Year per Year》(写真)など2つの新しい作品が加わった ©️チームラボ

── 先日発表した《フラワーズ ボミング ホーム》もその一環なんですね。

猪子 家で描いた花をアップロードすると、他の参加者の描いた花々と組み合わさって、YouTube Live上の動画で咲いていくという作品です。

たとえ、家に留まらざるを得ず、ほかの世界と断絶した状況になってしまったとしても、世界中とつながっているということを実感できると思います。知らない世界やだれかとつながっている、このことだけで祝福される世界と作品を作りたいと考えました。

ここ数ヶ月、人類は歴史上もっとも家の中にいたかもしれません。昔から疫病は蔓延していて、感染した人は隔離されたりしていたけど、amazonも宅配便もなかったから、生活のためにどうしても家から出ざるをえなかった。ここまで家にい続けることなんてできませんでしたからね。

《フラワーズ ボミング ホーム》は、個人のデバイス上や紙に描いた花をアップロードすることで、YouTube Live上で世界中の人々が描いた花々と、一つの作品となり、 咲き渡っていくというもの ©️チームラボ

── 《質量のない雲、生命と彫刻の間》も《フラワーズ ボミング ホーム》も、形体は異なれど、「境界」というテーマに沿ったもので、そして終わることなく続いていく作品なのですね。

猪子 ピカソは物事を多様な視点でみたほうが美しいと思って、一つの画面のなかで視点が異なる絵を描いた。カメラのように一点で見るより、多様な視点で物事をみたほうが美しいと。それと同じように、連続する美を造っていきたいなと考えています。

人間は無意識のうちに境界を作り、区別をしてしまい、連続性を断っている、withコロナの時代は特にそう感じます。これからも強い意志を持って、境界のない連続する世界の美しさを追求していきたい。マカオで発表した《質量のない雲、生命と彫刻の間》も、いずれはシリーズで発表できるといいですね。

プロフィール

チームラボ

アートコレクティブ。ニューヨーク、 ロンドン、 パリ、 シンガポール、 シリコンバレー、 北京、 台北、 メルボルンなど世界各地で常設展およびアート展を開催。 東京·お台場に《地図のないミュージアム》「チームラボボーダレス」を開館。 2022年末まで東京·豊洲に《水に入るミュージアム》「チームラボ プラネッツ」開催中。 2019年上海·黄浦濱江に新ミュージアム「teamLab Borderless Shanghai」を開館。 2020年6月にマカオに常設展「teamLab SuperNature Macao」オープン。 11月8日まで九州·武雄温泉·御船山楽園にて「チームラボ かみさまがすまう森」開催中。