withコロナ時代の美術館・博物館で大きく変化したのが入場方式だ。
多くの施設が日時指定の予約制を採用しているものの、方式がそれぞれの施設によって異なるため、利用者の混乱と戸惑いも生じている。このような状況のなか、チームラボは5月より自社で運用していた時間制来館者管理システム「チームラボチケットシステム」の外部提供を開始、注目を集めている。
アート集団として知られているチームラボの創業メンバー、堺大輔氏に、ビジネスの観点からwithコロナ時代について伺った。
アート集団チームラボが持つ別の顔
── このコロナ禍のなかでも、チームラボは国内外で精力的に活動し、さまざまな展示を行っています。それに加えて、ITサービスも開発されているのですね。
堺大輔(以下、堺) チームラボは国内外で発表するアート作品で注目をいただいていますが、対企業向けの受託制作も売上の多くの割合を占めています。
最近ですと、りそなグループのスマホアプリを開発し、2018年度グッドデザイン賞を受賞しました。
現在在籍するメンバーは全体で約700名ですが、そのうちの約7割がエンジニアです。多くのメンバーが、クライアントワーク、いわゆる受託制作を担当しています。
アートを体感していただくお客様、ビジネスソリューションを体感していただくお客様、それぞれの声をそれぞれに反映して、よりよい相乗効果を生み出せていると思います。
── チームラボが開発した時間制来館者管理システム「チームラボチケットシステム」も自社で開発されたのでしょうか?
堺 はい、受託制作部門が制作しました。このシステムは、もともとはお台場にある常設展示の「チームラボボーダレス」のために開発したものです。
チームラボは、海外のファンがとても多く、お台場の「チームラボボーダレス」では、開館から1年では、約5割が外国からのお客様でした。
既存のプレイガイドは海外からのお客様に対応できないところが多いので、チケット予約と決済が可能で、入場人数も曜日や時間で調節ができる、さらにプレイガイドと自家直販、端末をふくめてすべて一括で在庫管理でき、さらに紙を使わずeチケットで発券できるシステムを導入しよう……と思ったのですが、当時はそのようなシステムを作っているところは見当たらなかった。そこで、なかば仕方なくチームラボで作っていたんです。
── そこにコロナ禍がやってきた。
堺 いろいろな文化施設が閉館を余儀なくされてしまう状況に胸が痛みました。自分が美術館や博物館に行けないのもつらいですが、子どもたちが文化的なものに触れられない状況をなんとかしたいと考えました。
だったら、自分たちが現在使っているシステムを活用して、ほかの施設に提供できればいいのではないかと思ったのです。時間ごとに区切ってチケットを販売できるので、入場人数のコントロールが可能です。
また、来場者の入場までの待ち時間の緩和、混雑緩和により、快適な鑑賞環境を提供できます。紙のチケットを使わず、入場時はQRコードをかざすだけなので、入場時の接触のリスクも回避できます。
文化を体験することに少しでも貢献できるのではないか。そう思ってプレスリリースを出したところ、思った以上に反響がありました。
この8月までに100件ほど問い合わせをいただいています。美術館のほか、プールや動物園、遊園地など、人が集まる施設の方にとっては非常に悩ましい問題なのだと、お問い合わせをいただき実感しています。