芹沢文乃&梅ノ森千世&霧谷希『はっぴぃ にゅう にゃあ』(『迷い猫オーバーラン!』)

2010年に突如とリリースされた奇跡の電波ソング、それが、この『はっぴぃ にゅう にゃあ』です。

ライトノベルを原作としたテレビアニメ『迷い猫オーバーラン!』のオープニング曲なのですが、とても2010年代の曲とは思えない程のスッカスカな打ち込みサウンドをバックに、不安定な歌メロが乗る「電波ソング」の名に恥じない珍曲中の珍曲となっています。

歌っているのは、アニメでメインヒロイン役を務めた伊藤かな恵さん、井口裕香さん、竹達彩奈さんのお三方。それぞれ、歌唱力には定評があり、ソロでのレコードデビューもしている声優さんですが、この曲に関しては(恐らくは意図的に)、微妙に音程を外しまくった歌唱に終始しており、それが何ともいえない不思議な音楽的効果を生み出しています。

しかしながら、その"ヘタウマ"な歌が凄まじい中毒性を生み出しているのも事実。可愛いけれど、支離滅裂な歌詞も相まって、『迷い猫オーバーラン!』の視聴者に空前絶後の衝撃を与え、多くの中毒者を生み出したのでした。

アニメ本編も、「各話毎に監督が入れ替わり、話数の大部分がアニメオリジナルのエピソード」という非常に実験的な手法を用いて制作されていた為、シュールなシーンやナンセンスな展開も多く、それもこの曲の中毒性をより一層高めていたように思います。

ちなみに、この曲の作曲者は前述の『撲殺天使ドクロちゃん』や『大魔法峠』、『ナースウィッチ小麦ちゃんマジカルて』という所謂「邪道魔法少女OVA三部作」の音楽を担当し、いずれの作品でも怪曲、珍曲を聴かせてくれた高木隆次さん。

それを踏まえてみると、『はっぴぃ にゅう にゃあ』のグダグダな音も、実は意図的な作家性に依るところが大きいのでしょうが、その作為を極々自然なものに見せる手腕は本当に凄いと思います。

日向美ビタースイーツ♪ 芽兎めう『めうめうぺったんたん!!』(『ひなビタ♪』)

2000年も半ばに入ると、ニコニコ動画の普及もあってか、同人音楽やヴォーカロイドのシーンから、電波ソングのヒット曲が次々に生み出されていったように思います。

例えば、同人ゲームソフト『東方』シリーズに登場するキャラクターをモチーフとした『魔理沙は大変なものを盗んでいきました』や『チルノのパーフェクトさんすう教室』のヒットで知られる「IOSYS」は、その最たる例でしょう。

アニメやゲーム、そして同人音楽とジャンルを問わず音源のリリースを重ねているIOSYSですが、電子音楽を基盤にした依存性の高いサウンドは、電波ソングの可能性を大きく広げたように思います。

KONAMI発のメディアミックス型音楽プロジェクトに提供したこの曲は、電波ソングの"王道"とでも呼ぶべき、可愛さと中毒性、そして、ナンセンスな不可思議さという要素が洗練された音楽的バランス感覚の元に集結した一曲。五十嵐裕美さんの歌声も素晴らしいです。

ヒャダイン『ヒャダインのカカカタ☆カタオモイ-C』(『日常』)

「電波ソング」や「萌えソング」と呼ばれる個性派音楽を考える上で、その手法をアイドルシーンに持ち込んだという意味で、前山田健一さんも重要なクリエイターの一人としてお名前を挙げないわけにはいきません。

この『ヒャダインのカカカタ☆カタオモイ-C』は、前山田さんが「ヒャダイン」名義でリリースした自身のメジャーデビューシングルです。男女のデュエット(ただし、女性声のパートは、前山田さんが自身の声を音声加工した"ヒャダル子"が歌っており、実質的にはソロ曲)による超高速の掛け合いが最大の特色となっています。

本稿で紹介している他楽曲に比べてみると、電波的な異常さは希薄ですが、突拍子のない曲展開と仕掛け、そして、とことんポップでフルスロットルなメロディなど、美少女ゲーム全盛期における電波ソングの名曲群と多くの共通項を持つナンバーといえるでしょう。

「でんぱ組.inc」のようなアイドルユニットへの提供曲や、アニソン、声ソンへの楽曲提供といった前山田さんの活躍を振り返る上で、また、電波ソング的なエッセンスを持つ楽曲をポピュラー・ミュージックに落とし込んだその功績を考えるにあたり、決して外すことができない一曲だと思います。

なお、こちらも京都アニメーション製作アニメの主題歌(2011年に放映された『日常』のオープニング主題歌に起用)。思い返してみれば、一時期の京都アニメーションは主題歌や挿入歌に電波な楽曲が多かった! また、この位、はっちゃけった曲を京アニ作品で聴いてみたいものですよね。

都内在住の極々平凡なサラリーマン兼、アニメ、音楽、プロレス、映画…と好きなものをフリーダムに、かつ必要以上に熱っぽく語るBLOG「さよならストレンジャー・ザン・パラダイス」管理人。永遠の"俺の嫁"である「にゃんこい!」の住吉加奈子さんと共に、今日も楽しいこと、熱くなれることを求めて西へ東へ。